<タキシフォリン連載:第2弾>国立循環器病研究センターの医師が推奨|認知症の予防+治療に鍵を握る成分 タキシフォリン

執筆者:水上 ゆかり
JR大阪駅から約7分、JR岸辺駅に直結という場所に新築移転された「国立循環器病研究センター」。同センターには、認知症の診療と研究に励む2人の医師がいます。今回は、脳神経内科の名医である猪原匡史先生と齊藤聡先生に、認知症の予防・治療に新たな光をもたらす成分「タキシフォリン」についてお話を伺いました。

 

国立循環器病研究センター(以下:国循)はどのような施設ですか?

齊藤:当センターは1977年に開院し、40年以上にわたって循環器病の治療や予防、研究に取り組んできました。

猪原:国循のキャッチフレーズは、「最先端の、その先へ」です。

齊藤:その通りです。当センターでは循環器病の克服を目指し、常に新しい技術を取り入れ、日々進化しています。

猪原:脳と心臓の循環器病の研究を両方担うセンターは、世界でも非常に珍しいんですよ。

齊藤:国循が2019年7月に吹田操車場跡地に移転したことをきっかけに、JR岸辺駅の北側一帯が「北大阪健康医療都市」、通称「健都(けんと)」と名付けられました。健康と医療をコンセプトとした街づくり計画に、国循も協力させていただいています。現在も企業と連携して共同研究を行いながら、循環器病の分野で世界をリードする地域を目指しています。

厚生労働省は、2025年に認知症高齢者は700万人に達すると推測しています。認知症はどのような病気でしょうか?

猪原:何かを考えたり、判断したり、記憶したりといった認知機能が衰えて「生活に支障が出てしまう状態」が認知症の定義です。テレビで見た芸能人の名前が思い出せないからと認知症を疑う人がいますが、それは違います。また、認知症はアルツハイマー病と同じだと捉えられるきらいがありますが、アルツハイマー病は認知症の一つの病型です。30〜40年前までは、アルツハイマー病は血管性認知症の次に多い認知症でした。しかし、昨今の超高齢者社会における認知症の半分はアルツハイマー病が占めており、最も多いと言われています。アルツハイマー病は高齢者に発症しやすい病気なので、平均寿命が延びると認知症になる割合も増えるという事情があります。

先生方が認知症患者と向き合う中で感じていることを教えてください。

齊藤:やはり患者さんの高齢化は感じますね。90歳以上の患者さんに手術をする機会も結構増えましたし、その多くの方が認知症を発症しています。昔から、社会全体でどのように認知症と共存、共生していくかは課題になっていました。特にコロナ禍においては、入院中の面会が制限されることで認知機能がさらに衰え、治療が困難になるケースも少なからず発生しています。また、昔は病気になると閉じこもりがちになってよそ様に見せないようにする風潮があったかもしれませんが、今は違います。一人一人が社会の中で健康的に生きていくべき時代ですし、それを実現させるためにも、認知症をコントロールすることは非常に重要だと感じています。

お二人は認知症予防・治療におけるタキシフォリンの有効性を示されています。タキシフォリンと出合った経緯を教えてください。

猪原:これがね、あまりドラマティックな出合いではないんですよ(笑)。当時、日本のある大手製薬会社と共同研究を進めていたのですが、この製薬会社が非常に興味を示していたのがタキシフォリンだったんです。認知症に対して、具体的にどのような効果をもたらすのかを調べて欲しいと言われました。

齊藤:確か2013年頃にお話をいただいて、タキシフォリンの研究を始めましたね。僕は猪原先生から指示をいただいて、当時認知症の有効性が期待されていたシロスタゾールという薬との併用効果と、単体の効果を同時に調べました。そして、6カ月ほどタキシフォリンを投与したモデルマウスに水迷路試験を試みたところ、非常に良い結果が出たんですよ。猪原先生に報告したら、「これはすごい」と。認知症にこんなによく効く成分はめったにないと驚かれていましたね。

国立循環器病研究センター猪原匡史医師

 

2017年に英国の専門誌「Acta Neuropathologica Communications」に、タキシフォリンに関する研究論文を発表されました。研究成果のポイントを教えてください。

齊藤:やはり一番は、認知症モデルマウスの認知機能がタキシフォリンで大幅に改善したことでしょうか。

猪原:マウスの認知機能が、ほぼ正常化しましたね。

齊藤:そうです。マウスの記憶力だけじゃなく、脳の血流や血管のしなやかさなど、あらゆる問題がほぼ正常といえるレベルにまで向上していました。理由としては、アルツハイマー病の原因となるタンパク質の一種である「アミロイドβ」が関与しています。このアミロイドβの凝集を、タキシフォリンが抑制することが分かったんです。他にもアミロイドβを減少させ、認知機能を改善させる薬剤はいくつかあるのですが、認知機能の改善効果はタキシフォリンで特に顕著だったと記憶しています。

猪原:アミロイドβは脳内の老廃物なんですよ。だから、認知症を発症している脳は、ゴミが溜まった「たまり病」の状態になっているとも言えます。このアミロイドβは早い人で40代から増え始め、徐々に脳内に蓄積されていきます。例えば認知症の発症が70代だとしたら、20年前の50代頃から間違いなくその兆候は始まっていて、認知機能が衰えていない80代の方でも、3割程度のアミロイドβは溜まっているのです。もちろん運動不足もそうだし、頭をあまり使わなくなることや、高血圧や糖尿病などの生活習慣病など、複数の要因が起因してアミロイドβは増えやすくなります。しかし、溜まってしまったものは、洗い流せばいいわけです。つまり、なるべくゴミを増やさないようにするか、ゴミ回収車に頻繁に来てもらえるような仕組みを作ればいい。脳内に溜まっていく老廃物の蓄積を抑制する効果のある成分として、タキシフォリンは高い可能性を秘めていると思います。いまサプリメントを飲んでもらっている人がいるので、その効果については将来確認していこうと思っています。 

2019年4月には京都医療センターの先生方との共同研究を行い、米国科学アカデミー発行の機関誌(PNAS)でタキシフォリンの新規作用を発表されましたね。

猪原:はい。この研究の一番のポイントは、脳内の炎症を抑えたということです。

齊藤:そうですね。アミロイドβが溜まったマウスにタキシフォリンを与え続けたところ、脳内のアミロイドβの量や炎症を起こす細胞の数が、劇的に抑えられました。この研究で、私達が想像していた以上にタキシフォリンがさまざまな面で脳によい作用をもたらすことを、京都医療センターの浅原哲子先生や田中将志先生が示してくれましたね。田中将志先生は、「やればやるだけポジティブな結果が出て面白い」と話されていました。

タキシフォリンを摂取されている患者さんもいらっしゃいますか。

猪原:僕が知っている患者さんの中にも、タキシフォリンのサプリメントを飲まれている方が一定数おられます。その患者さんのご家族から、タキシフォリンを摂取することでご本人が活動的になったというお話を耳にしたことが何度かありますね。我々は動物実験によるタキシフォリンの研究成果を発表しているわけですが、タキシフォリンを投与した認知症モデルマウスは実際にすごく元気になるんですよ。タキシフォリンは安全性も高いですし、特に認知症予防の面においては若いうちから摂取されるとよいと思います。

国立循環器病研究センター齊藤聡医師

東北大学の名誉教授、木村修一先生と駒井三千夫先生は、タキシフォリンを摂取することで健康寿命を延ばせるとのお考えです。これについてはどう思われますか。

猪原:私が論文で調べた範囲では、タキシフォリンの抗酸化作用はもう最強の部類ですね。さらに、抗糖化力もあります。「老化の大きな要因は酸化だ」と言われますが、タキシフォリンはこの酸化と糖化を抑制する力が非常に強い。「酸化がサビで糖化がこげ」という面白い表現があるんですが、老化によって体内に蓄積されていくサビやこげを抑制するということは、結果的に健康寿命の延伸につながるのではないかと考えています。さらに、認知症の一因となる老廃物をも減らしてくれるわけですから、タキシフォリンの効果には目を見張るものがあります。私は、タキシフォリンを認知症の予防薬にするのが良いと思っております。しかし現実的には「予防薬」というものは難しいので、むしろサプリメントなどの食品として、継続的に摂取するのが理にかなっているのではないでしょうか。 

認知症にならないために、私たちが普段意識した方がよいことを教えてください。

猪原:認知症にならないためには、活動的に暮らすことが有効と思っています。フィンランドで行われた「フィンガー研究」という有名な研究があるのですが、この研究で明らかになった認知機能の低下を抑制する方法は、脳のトレーニングと定期的な運動、バランスの良い食事でした。要するに、一つの方法だけじゃなく、多面的なアプローチを行うことで、確実に認知機能の低下を抑制できるということが初めて証明されたんです。

齊藤:認知症は脳の病気です。そして、脳は血管が非常に多い臓器なんですね。心臓が送り出す血液中の酸素や栄養素の結構な量を脳が消費しているので、「心臓」と「脳の血管」の健康を維持することは、間違いなく認知症の予防に直結します。フィンガー研究で示された認知症抑制のための方法は、血管にとってもよいことなんですね。

最後に、お二人から読者にメッセージをお願いします。

猪原:認知症専門医という立場から私が一番お伝えしたいのは、「認知症=アルツハイマー病」と誤解されていますが、決してそうではないということ。そして、血管性認知症、アルツハイマー型認知症のいずれにおいても、循環器病の予防が非常に効果的だということです。アルツハイマー病と聞くと「難病だからどうしようもない」と思われがちですが、決してそうではありません。認知症のかなりの部分は予防できる病気なので、気になる方はほったらかしにせず、国循の高度循環器ドックを是非受けにいらしてください。

齊藤:猪原先生がおっしゃるように健康的な生活を送ってもらうことが一番良くて、それは認知症以外の疾病に対しても必ず良い方向に作用しますので、毎日を大切に過ごして欲しいと思います。また、先ほど「Acta Neuropathologica Communications」の研究論文について触れましたが、それに関して研究者やそのご家族などから時々問い合わせをいただくことがあります。タキシフォリンは世界中から注目されている成分ですし、我々もその可能性をさらに解析していきたいですね。

 

国立循環器病研究センター脳神経内科医

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国立循環器病研究センター 脳神経内科部長
猪原 匡史(右)
1995年京都大学医学部卒業。脳卒中・認知症を学ぶため英国ニューカッスル大学に留学。帰国後、京都大学神経内科病棟医長などを経て、2013年に国立循環器病研究センターの脳神経内科医長に。2016年より同部長。現在は、脳卒中と認知症の診療と研究を行い、多数の国際共同研究を手掛けている。
国立循環器病研究センター 脳神経内科医師
齊藤 聡(左)
2006年京都大学医学部卒業。2014年、国立循環器病研究センターの研究員に。2017年より同センター脳神経内科にて医師として従事。2019年4月から2021年3月まで英国サザンプトン大学に留学。2021年4月より、国立循環器病研究センターに復帰。専門領域は臨床神経学(特に認知症・脳血管障害)。現在は神経内科・脳卒中の専門医として活躍する傍ら、認知症の指導医も兼務している。
この記事の取材協力・執筆者
取材協力
株式会社DHQ
執筆者
水上 ゆかり
福岡出身、横浜在住。福岡の零細企業でフリーマガジン・タウン誌の編集者として4年間孤軍奮闘。ミュージシャンや俳優、経営者、学生などから多岐にわたるテーマの取材・撮影を行い、1年間は編集長も兼務。その後、オーガニック製品(食品・化粧品・雑貨)の企画職を経て、2017年にフリーのライター・編集者に。同年、アロマ検定1級を取得。化学物質に頼らない暮らしを日々実践中。
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