スペシャル対談〈後編〉「カッコいい寄付をしたい」コシノジュンコさんと考える社会課題と向き合う未来

執筆者:水上 ゆかり
2022年4月、世界的デザイナーのコシノジュンコさんが一般財団法人日本寄付財団の「特別名誉大使」に就任されました。日本寄付財団は、子どもや高齢者、障害者への支援、伝統文化や芸術の復興、発展途上国への支援など、社会課題解決のための活動を行っています。その代表理事であり、芸術支援の財団も運営する村主悠真さんと、コシノジュンコさんとの対談インタビュー。後編では、コシノジュンコさんが考える寄付の仕方や歳を重ねる上で大切にしたい心掛け、お二人の今後の活動について語っていただきました。
 

【前編】「いいお金の使い方は人を生かすこと」コシノジュンコさん流の寄付活動とアートへの想い

やっぱり「カッコいい寄付の仕方」ってあると思うんです。

―お二人は現在、どのような社会課題に関心や興味をお持ちですか。

村主:今僕は、ウクライナ紛争で避難者が集中しているポーランドにお金を届けるという支援も含め、計画を立てているところです。来月か再来月にポーランドに行く可能性があるので、そのときまでに準備が間に合えば良いのですが。

コシノ:ウクライナが今、どれほど大変な状況にあるかは、特に戦争を実際に体験された方は強く実感されていると思います。

村主:そうですね。まだ計画段階ではありますが、僕らの活動が何かの役に立てればうれしく思います。

コシノ:私ね、ポーランドのウッチという街にある美術大学で、よくファッションショーや講演をしていたの。そのお礼に、市長さんからプレゼントをいただいたことがあるのですが、その中身が“市民権”だったんです。「どうして市民権なの?」と尋ねると、市民権を得た人はウッチの歩道にずらーっと並ぶ名前入りのプレートを作ることができるそうなんです。私は寄付をすればそのプレートに名前が入れられると思っていたんですが、市民権がないとダメだったんですね。それを知っていた市長さんの計らいが本当にカッコよくて、こんなにもカッコいい寄付の仕方もあるんだなと感動しました。

村主:そうですね。僕もそう思います。

コシノ:寄付に充てたお金がどういうふうに生かされ、どういう形で使われたのかを見極めないとやっぱりダメですね。私たちは東日本大震災への支援に充てたお金で、親を失った子どもたちをサポートしています。あの頃、まだ小さかった子どもたちが今は大学生になっています。

村主:あれから10年ちょっと経ちますもんね。

コシノ:やっぱり、カッコいい寄付の仕方ってあると思うんです。その精神を日本でも取り入れて欲しいし、ぜひ研究して欲しいですね。

どんなに歳を重ねても出し惜しみしない。全ては人の喜びのためです。

―歳を重ねるほど将来に不安を感じる方も多いと思います。コシノさんは年齢をどう捉えていらっしゃいますか。

コシノ:年齢を気にしてなんになるのって思いますね。年齢を気にして行動を起こせないとか、年齢を知られることで周囲の目が変わることもあるかもしれませんが、じゃあ若い方が良いかというとそうではなくて、私は中身だと思うんです。やる気っていうのかしら。

村主:なるほど。

コシノ:歳だからといってやる気を出さない人は、いつまで経ってもダメだと思うんです。やる気、つまり“気”が大事なのね。私、コロナ禍で「コシノジュンコ56の大丈夫」という本を書いたんですが、「大丈夫」という言葉には、“人”という漢字がそれぞれ含まれているでしょう。全ては人のためなんですよ。人が喜ぶことをすることが、一番の元気の源。それも、たった一人で始めること。団体としてやりましょうとか、みんなで渡れば怖くないとかじゃなくて、一人で責任を持ってやることが大事なんです。

村主:「大丈夫」という言葉には、そんな想いが込められていたんですね。

コシノ:ええ、価値観は人それぞれ違うと思いますけれど、「自分だけが楽しければいい」という考えではダメで、人が喜ぶことを続けるうちに一番良い場所にたどり着いたりするんですよ。無理をするのは良くないけれど、歳だからって諦めるのも良くない。せっかくいろんな経験をしてきたんだから、若い人や誰かのために分けてあげなきゃ。

村主:確かに、僕もそう思います。

コシノ:この本にも書いたんですが、自分がどうして元気でいられるかっていうと、動いているからだと思うんです。運動は“運が動く”って書きますでしょう。私は週に2回、どんなに忙しくてもジムに行きます。休むのは簡単ですよ。でもね、行動を起こすにはやる気が必要だし、最初は気が張るんだけれど、それでも大切だと思うから行くんです。

世界が抱える社会課題の解決に向けて、できることを模索し続けたい。

―現在30代の村主さんは、どのように歳を重ねていきたいですか。

村主:僕自身、若い経営者の人と話す機会がよくあって、稼いだお金は自分が好きなことや遊びに使いたいという人が多いなと感じているんです。でも僕は「社会のためにできることをしようよ」と思っていて、自分が率先して動くことでそれを彼らに示したいんです。まだ30代の自分にできることは限られますが、今以上にもっと活動を拡大させて、誰かのお手本になるような人間になりたいと思っています。

コシノ:30代で若くないという人がいますけれど、未来から見ると今が一番若いでしょう。40代までは若いけど、じゃあ50代からはもうダメかというとそういうことではなくて。今この瞬間がみんな一番若い。そこに早く気付いた人は得ですよね。年齢で左右されてしまうのはおかしいですから。

―今後の具体的なビジョンや目標はありますか。

村主:少しでもお手伝いができる国を世界中に増やしたいという思いがあるので、今年と来年以降はそこに力を注いでいきたいですね。

コシノ:アートの分野では、どのような活動をされる予定ですか?

村主:実は来週からニューヨークに行って、日本人や現地のアーティストを支援するという話が進んでいるところです。

コシノ:彼らの環境を整えてあげるんですね。

村主:はい。ただ日本のアーティストは、僕が思っている以上に海外に行くことをためらう人が多いんですよ。「海外に行けるよ」とか「生活の面倒は全部みるから挑戦しよう」と言っても、なかなかOKをもらえなくて。

コシノ:日本は居心地がいいと思ってしまうんでしょうね。でも私、実際に自分の目で見て体験する分かり方と、映像を見ての分かり方って全然違うと思うんです。

村主:そうですね。僕もそう感じています。

コシノ:中国の人でね、万里の長城を何日もかけて歩いた人がいたの。またある人は、関西から熊本まで2カ月かけて牛と一緒に歩いたそうです。人と違う体験をするのも一種のアートだし、誰もやっていないことを始める人が本当のアーティストじゃないかしら。ちょっと変な例えかもしれないけれど、そういう人たちを応援するのも面白そうですね。

―最後に、コシノさんの今後の活動予定を教えてください。

コシノ:今年から来年にかけても、このまま勢いを崩さず精力的に活動していきたいですね。やっぱり誰もやらないことに挑戦することが、世界に通じることにつながると思っています。寄付だって団体である必要はなくて、まずはたった一人からでも始めればいい。それが大きな力に変わっていくと思います。

Plofile
デザイナー
コシノジュンコ
1978年から22年間パリコレクションに参加。北京、NY(メトロポリタン美術館)、キューバ、ロシアなど世界各地にてショーを開催し、国際的な文化交流に力を入れる。オペラ「蝶々夫人」、「魔笛」からブロードウェイミュージカル「太平洋序曲」(トニー賞ノミネート)、スポーツや合唱団のユニフォーム衣装、インテリアデザインまで幅広く活動。国内被災地への復興支援活動も行っている。2025年国際博覧会協会シニアアドバイザー、文化功労者。2021年、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章。書籍「コシノジュンコ56の大丈夫」(世界文化社)が発売中。
一般財団法人日本寄付財団 代表理事
村主悠真
大阪大学在学中に起業。24歳でプライベートファンドを設立し、投資活動を開始。30歳から社会貢献活動に取り組み、子どもの貧困問題を中心に寄付活動を拡大させる。38歳で「一般社団法人村主現代芸術文化財団」を設立後は、若手芸術家への助成支援も開始する。2021年、日本の寄付文化の再構築を目指し、39歳で「一般財団法人日本寄付財団」を設立。世界が抱える社会課題の解決と人々の幸福度の向上、世界平和のため精力的に活動中。

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