企業変革、カルチャー改革の真っ只中にある三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)では、2022年度の新卒採用者数611名に対しキャリア採用者数が476名と、多様なバックグラウンドや専門的なスキルを持つ社員の積極的な採用を進めています。
今回は、キャリア採用でMUFGグループに入社した3名の方に集まっていただき、転職を決意したきっかけやMUFGを転職先に選んだ理由、そこで描くキャリアデザインなど、キャリアの創り方について伺いました。
【お話しいただいたのは】
キャリアチェンジを考え、MUFGを選んだ理由
飾森さん MUFGは今、多様な価値観や自由な発想が生まれる組織風土により、さらに価値を創造できる会社に変革していくために、たくさんのキャリア人材を採用しています。2022年度の採用実績(※)は新卒採用が611人に対して、キャリア採用が476名。この数字を聞くと多くの人に驚かれます。今回は、キャリア採用の皆さんに集まっていただき、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ皆さんがどのようなチャレンジをして、どういうビジョンを持って入社されたのかを伺いたいと思っています。
※2022年度の銀行・信託・証券3社合計の採用実績。
鍬塚さん 私は現在、三菱UFJ銀行のサステナブルビジネス部で、お客さまのサステナビリティ経営やグリーントランスフォーメションへの取り組みの開示を支援するコンサルティング業務を担当しています。前職では、電力や水といったインフラの事業開発や投資を行う部署でファイナンス業務を主に担っていました。その関係で、資金調達をするスポンサー側から、プロジェクトファイナンスをアレンジするレンダー側であるMUFGに転職しました。
飾森さん 調達する側からアレンジする側へ、全く反対側への大きなチャレンジですね。企業のサステナビリティ経営に貢献するというのは、今のMUFGにとって、ど真ん中の仕事ですが、銀行が他の企業の環境社会課題に一緒に取り組んでいるということは、外から見るとちょっと分かりにくいかもしれませんよね。
鍬塚さん そうですね。銀行でコンサルティング業務をするということ自体が新しい取り組みだと思います。MUFGが多くの企業の環境問題や社会課題解決に取り組んでいることをもっと広く知ってもらえたらという思いで仕事に取り組んでいます。
諸葛さん 前職は生命保険会社に勤務していて、主にお客さまからお預かりした保険料の資産運用に幅広く携わっていました。入社当初は、株式や債券、オルタナティブ資産の資産配分を担当し、その後は、ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドへの投資や、外国為替などを担当しました。
現在は、三菱UFJ信託銀行の運用商品開発部に所属し、主に国内の企業年金基金を中心とした機関投資家のお客さまの運用資金を受託させて頂き、海外のヘッジファンドに投資するビジネスを担当しています。優秀なヘッジファンドを見つけるリサーチ業務、見つけてきたヘッジファンドのお客さま向け提案、その運用報告などを行っています。これまで培ってきたマーケットの知識や、実際のヘッジファンドの投資の経験など、そういった部分がそのまま活かせると思い、転職しました。
三逵さん 私は現在、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の人事部企画課に所属していて、社員の意識調査や福利厚生、年金に関わる業務に携わっています。前職は、メーカーに勤務し、営業職と人事の分野を経験してきました。営業経験は今思い出してもとても貴重な経験で、たくさんの中小企業の経営者のお客さまとお話しする機会に恵まれて、そこで様々な知識を得ることができて、育ててもらったなと思っています。
飾森さん そんな充実したキャリアを重ねる中で、あえて全く異なる業界に転職した理由を教えてください。
三逵さん 営業から人事に異動になり、経営やマネジメントについてより学びたいと思い、ビジネススクールに通いました。ビジネススクールでは、会社や業界の枠を越えた友人がたくさんできたのですが、その中に金融業界の方もいて話を聞きました。もともと、社会の根底を支えている金融という業界に、私自身ずっと興味があったことや友人の話もあり、「いつかは金融業界にチャレンジしてみたいな」と思っていました。それがチャレンジのきっかけとなり、現在に至ります。
飾森さん 皆さんそれぞれ自分の軸を持って、プロフェッショナルとして入ってこられたわけですね。私もキャリア採用入社です。長年電機メーカーでコーポレートコミュニケーションの仕事に携わってきて、金融という全く異なる業界に飛び込んできましたが、MUFGでもこれまで培った専門性を活かして働くことができています。
キャリア採用者から見たMUFGの風土・カルチャー
鍬塚さん お二人は入社してすぐに馴染めましたか?
諸葛さん 私は割とすぐに馴染めました。先にMUFGに転職していた前職の同僚から「MUFGは外部の異なる文化を受け入れてくれる土壌がある」と聞いていましたが、実際、入社してみても、穏やかで、異なる視点も恐れず受け止めてよく話を聞いてくれる人が多いと感じています。
三逵さん 同感です。異なる視点でも受け止めてもらい、建設的なディスカッションにもっていってくれるので、こちらも安心して意見を言うことができます。
飾森さん 諸葛さんは、運用のプロということで同じ金融でも業態の異なる信託銀行に来られたわけですが、なぜMUFGを選んだのですか。
諸葛さん できるだけたくさんの優秀な人材の中に自分を置いて試してみたい、そしてできるだけ「任せる」形で仕事をさせてくれる会社に入りたいと思っていました。これは入社して改めて感じたことですが、MUFGには、社員にできるだけ自由に働いてもらおう、という風潮があります。そういうところが入社して良かったな、と思っている点ですね。
飾森さん 確かに、「任せるよ」という部分は大きいかもしれません。部下のことを信じて任せられる上司がいる。任せられた部下も自信がつく。その流れが、全体として大らかな社風、ひいてはキャリア採用者も活躍できることにつながっているのかもしれません。
鍬塚さん 自主性を大切にしてくれるという点は、私も同感です。また、MUFGは、プロジェクトファイナンスで権威のある専門誌「Project Finance International」のグローバルMLAランキングにおいて、何度も一位を受賞していることからも、優秀な人が多いというイメージも持っていました。それに加えて、入社前に、この分野では他社と比較して女性の担当者が多く、男女関係なく活躍できる会社なんだな、という印象がありましたね。
仕事の中で自分の能力やノウハウをどう活かせるかを常に意識
飾森さん 皆さんは、組織に新しい風を吹かせていくことを期待されていると思うのですが、キャリア採用の立場として、何か意識していることはありますか?
三逵さん 今、社員の意識調査に関する業務を担当しているのですが、社員の声・思いを意識調査のアンケート結果で確認し、それに対する施策などをこれまでにない視点で、思い切ってどんどん提案していきたいと思っています。
飾森さん 社員の意識調査は以前から行っていますが、外から来た人でないと見えてこない部分や、思い切った打ち手を出せない場合も多くありますよね。
三逵さん はい。私は良い意味で社内にしがらみがないので、考えたことを率直に発言して実行に移せるのではないか、と思っています。
諸葛さん 私の強みは、様々なマーケットに対する知見と統計技術を使ったクオンツ分析だと思っています。特にMUFGがヘッジファンドに本格的に取り組み始めたのが、私が入社する少し前でしたので、これまでの知見を活かして、ヘッジファンドの戦略ごとのリスク・リターン特性を定量的に分析しました。リターンの安定性や株式・債券との連動性等、様々な角度で戦略を評価し、今後リサーチしていく戦略の優先順位を決めました。
飾森さん 諸葛さんは、運用商品開発部として、新しい戦略を練るところからご自分の過去の経験を活かしているというわけですね。
諸葛さん そうですね。先ほど申し上げた「任せてくれる」という話にもつながりますが、入社してわずか一ヶ月で、このような重要な業務を最初から任せてもらえたことに驚きを感じつつ、嬉しくもありました。これまでMUFGでは、外部のヘッジファンドを提供する形でやってきましたが、新たに今「ファンドオブヘッジファンド」を作り、その中に我々が運用者として優秀なヘッジファンドを組み込むことにもチャレンジしています。まだまだ、やるべきことがたくさんあります。
鍬塚さん MUFGでは、2021年7月に新たにサステナブルビジネス部が発足して、2022年4月にプロジェクトファイナンス領域からそこに異動になりました。そして、新規にコンサルティングチームが立ち上げられることになり、初期メンバーとして参画しました。どんなサービスをお客さまに提供できるのか、具体的に決まっていない部分も多くありましたが、私は前職で未経験ながら、事業投資部門で仕事がしたいと手を挙げ続けて、念願が叶いゼロからキャリアをリスタートさせた経験があり、コンサルティング業務のゼロからの立ち上げにも、これまで培った経験と挑戦を楽しむマインドを活かすことができたと思います。
飾森さん 自分でキャリアプランを描くこと、そのために実行に移すことはとても難しいですが、皆さんは、それぞれ自分らしくキャリア実現を一歩一歩進めていますね。
鍬塚さん 常に自分がやりたいことや得意とすることを意識し、より具体的にどう貢献できるのかを描きながら日々の仕事に向かうことが、大切だと思います。
諸葛さん 私もその部署に入ったからには自分の得意なことを活かして、何かしらの価値を生み出したいと思っています。異動を希望するにしても、まずは普段の仕事をある程度認められていないとその希望は叶いづらいので、評価なども常に意識しておくといいと思います。
三逵さん 私の場合はどちらかというと興味を広げることが大切だと思っていて。MUFGにはたくさんの事業本部もありますし、社内には「ジョブチャレンジ」(※)という制度もあります。興味を持っていることに思い切って飛び込んでみることも大切なのかな、と思います。
※キャリア開発を目的とした職務の社内公募制度
会社のめざすところと自分の信念がきちんと重なっているか
飾森さん 次に、現在の業務にプラスになっているなと感じる、MUFGの良いところはありますか?
諸葛さん まず社内に関しては、思った以上にキャリア採用者=各分野のプロが多いことですね。前職からヘッジファンド調査を担当していた人や、運用の経験があるという人がたくさんいます。社内で各分野のプロフェッショナルとチームを組んで仕事に取り組める環境は、自分の成長にもつながっています。
次に、外部の方々との関係においては、MUFGブランドの信頼感、規模感が大きなプラスになっています。例えば、新たなヘッジファンドと取引をしたいと思っても、相手がこちらと組みたいと思ってもらえないと始まりませんが、有難いことに、多くのファンドがMUFG というブランドに興味を持ってくれます。
三逵さん 私もMUFGのブランド力の大きさは感じています。私が入社していいなと思ったのは、「MUFG Way共鳴セッション」です。キャリア採用で入ってきて会社のことをあまりよく分かっていない状態で、共鳴セッションに参加しました。そこで会社が向かおうとしているところや、それを理解しつつ自分の信念・価値観と合わせていくプロセスを体験し、ここに来たことが腑に落ち、自分はこれからここでやっていくぞ、という決意が新たになりました。
飾森さん MUFGという会社の企業理念を社員が自分ごと化する、全社で取り組んでいるプロセスを「MUFG Way共鳴セッション」と呼んでいます。自分が大切にしてきた信念や価値観と、MUFGの企業理念が重なっているかどうかは、とても重要です。皆さんは前職で実現したかった信念や価値観と、今MUFGでやっていることにズレはないですか?
鍬塚さん 転職後も信念や価値観は変わっていません。自分のめざしている本質の部分はズレていないと思います。むしろMUFGでいろいろな経験をさせてもらうことで、金融業界や銀行の仕事の可能性を再発見しています。より視野が広がっている実感がありますね。
諸葛さん 私も前職と比べると、対象となるお客さまが変わったものの、運用でお金を増やしてお客さまに貢献するという目的の部分は変わっていません。その中で自分の痕跡をいかに残せるか、というところだと思います。
キャリア採用者だからこそMUFGに対してできる提言
飾森さん 反対に、会社に対してもっとこういうところが変わっていってほしい、変えていきたい、という部分はありますか?
鍬塚さん デジタル分野に関しては、取り組みを加速して、効率性を上げていきたいですね。まだまだ各自が一生懸命時間をかけてリサーチや分析している部分が残っているので、そこを改善していきたいです。自ら必要な改善にチャレンジしたり、発信したりして、周りと協力しながら進めていきたいと思います。
諸葛さん システム面に関しては、せっかくのノウハウやナレッジをもっと分かりやすいマニュアルに落とし込む必要があると思います。誰が見てもそのままやればできるというマニュアルになるのが理想です。
飾森さん ぜひ変えていきたいですね。私たちが行っているカルチャー改革プロジェクトは、とにかく現場から意見を出してもらうことが大事です。今年は現場から意見を吸い上げ改革につなげるアクションを進めていますが、現場から上がった改革項目は2,000件を超えています。特にキャリア採用の方からの意見は、また違う角度で出てきたりするので、とても貴重なものです。
鍬塚さん 変革が急速に進んでいることは日々、実感しています。私が入社した5年前は、まだまだ紙文化や印鑑文化が残っていましたから。
飾森さん 働き方に関しては、どうですか。
諸葛さん 非常に自由度が高いと思います。時間もフレキシブルですし、やるべきことをきちんと終わらせればいいという雰囲気がありますね。コロナの影響があったのも大きいと思います。
鍬塚さん 金融は柔軟性がなさそうだと思っていましたが、私も働き方に関してMUFGはすごく進んでいると思います。
三逵さん そうですね。MUFGには良い制度がたくさんあります。でもそれを意外と社員が知らなかったりするのが残念です。(笑)私が人事の立場から一つおすすめするのが、週末に行われているオンライン研修です。興味深い講義がたくさん開催されていて、私もいくつか参加していますが、参加人数がとても多くてびっくりしました。
一方で少し気になるのが、保守的な人が多いことでしょうか。社会・経済の基礎を担う金融という業種柄、どうしても安心安全を優先し、新たなチャレンジに対して臆病になりがちではないかと感じることがあります。会社は自分たちのものであり、待っているだけではもったいないなと。自分たちの会社を自分たちでもっとより良く変えていこうよ、ということを人事部から発信していきたいなと思います。
飾森さん ありがとうございました。最後にこれからの抱負や、MUFGという舞台で実現したいことがあれば教えてください。
鍬塚さん 「世界が進むチカラになる。」というパーパスにすごく共感しています。お客さまや社会に、金融機関としての強み、そして様々な企業や人とつながれるというMUFGの強みを活かして常にソリューションを出し続けていきたいです。
諸葛さん 私は運用にフォーカスした仕事をしているので、お客さまに提供するパフォーマンスを上げて、顧客満足度を上げていきたいです。この信念は前職から現在まで変わっていません。前職とターゲットとなるお客さまは変わりましたが、今のヘッジファンドより、もっとよいものを探していくというミッションもあります。あとは、クオンツモデルの研究やAI研究をしている部署で、自分のノウハウやスキル、経験を活かしてクオンツの運用モデルを作るなど、自分の運用能力を引き上げることもしていきたいです。
三逵さん 私は人事担当として、社員が活き活きと働いていける組織作りや制度作りをしていきたいと思います。MUFGにはグループ会社間での異動もあり、いろいろな人とつながるチャンスがあります。MUFGという枠の中で、人事という分野だけにとらわれずに、自分が興味を持ったものにどんどんチャレンジしていきたいなと思っています。
飾森さん 今回はお忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
「“ダイバーシティ経営とキャリア採用”(後編)人材の流動化やリスキリングを通じて、多様な人材がイノベーションを生み出す社会へ。」に続く。
後編では、多様な人材が成長や自己実現をしやすい環境を社会全体で創っていくために、経済産業省で行っているダイバーシティ経営や、キャリア支援事業についてのお話をお届けします。