今回は、働き方や職場環境が大きく変化してきた時代を切り開いてきた女性の役員4名にお集まりいただき、入社時に考えていたこと、仕事に対する意識の変遷、管理職になるまでの苦労とやりがい、現在に至るまでの、経験や想いについて伺いました。

【お話いただいたのは】

 

現在とは「まったく様子の違う社会」だった。4人の女性役員たちのスタートライン。

――本日はメーカー・金融・小売という異業界から女性の役員の方々にご参集いただきました。まずは、みなさんが役員になるまでのキャリアを簡単にお聞かせください。

栢原さん 私は新卒で味の素株式会社に入社しました。その時が女性の総合職採用の1年目で、入社後は、これもまた女性初となる営業職に従事しました。

その後、労働組合の専従やグループ会社への出向、人事部門を経て九州の工場などに転勤し、単身赴任も2回経験しました。女性の単身赴任は現在でもそう多くはないことかもしれませんが、夫の理解にも助けられたと思っています。

メインのキャリアとしては人事部門で、現在もまさに今回のテーマであるDEIの推進を主軸に仕事をしています。

田中さん 私が入社した時は、女性の総合職採用が始まって5年目くらいでしたね。

入社後は約20年間、社内のシステム開発に携わっていました。このまま技術系の道を歩んでいくものと思っていたのですが、その後、人事部に異動になり、その2年半後には兵庫・西宮支店の支店長を任されることになりました。

最終的には、全国6店舗の支店長を経験して、2023年の4月から役員として各支店をまとめる仕事をしています。

廣松さん 私は平成元年に入社。入社から10ヶ月間は営業店のカードセンターで接客していました。その後は本社のクレジットカード部門に配属されることになりました。

私の入社後、弊社のカード事業は、同年代の方ならお馴染みの「丸井の赤いカード」から現在のエポスカードになるまで4回リニューアルをしているのですが、そのすべてに携わり、フィンテック関連の事業の立ち上げを経験しました。

その間2回の育休をとり、2回目の育休明けからシステム部門に従事、会社がDEIへの取り組みを始めた頃に人事部に異動になり、4年間DEIの理解浸透、促進に携わりました。

その後は再びシステム部門に異動して、オフィスシステムやフィンテック事業の開発に携わり、現在に至っています。

南里さん 私は1992年に入社しましました。当時、同期は470人くらいいましたが、総合職の女性はたった8人。同期女性の少なさに愕然としたところからキャリアが始まり、そのまま三菱UFJ銀行で30年勤めました。

銀行でのキャリアのうち約20年が法人営業です。中堅企業から大企業までさまざま経験しました。そのほか、約10年は人事と広報に携わってきました。

現在は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券にてコーポレートコミュニケーション全般を担当しています。

 

男性社会に飛び込みキャリアを重ねるうちに自分の考え方にも変化が

――当時はまだまだ男性が主体の社会ですよね。そういった状況の中で社会人になられたみなさんの、入社当時のキャリアプランや現在のお考えなどをお聞かせください。

南里さん 先ほどもお話ししましたが、私が入社した時の同期女性は私を含め8名。管理職の女性にいたってはゼロでした。内定式で男性の同期が「最低でも支店長をめざしたい!」と意気揚々と語っていて、「これは大変なところに来てしまったぞ」と思ったことを覚えています。

私自身は、最初から管理職や役員をめざそう、という明確な意志はなく、「まずは3年頑張ってみよう」という感じでした。自分が選んだ会社なのだから、とりあえず3年間は責任を果たそうと。そうしているうちに3年が経ち、次は5年をめざそう、次は10年と少しずつ目標を先に伸ばしていって現在に至ります。ちょうど10年勤めた頃から、悩みは尽きませんでしたが、いつまで勤務しようという考えはなくなってきたように思います。

廣松さん 弊社は、元々女性の社員が多く、私が入社した時代は女性社員の平均年齢は今よりもだいぶ若かったです。南里さんと同じく、私が入社した時は本社に管理職の女性はおらず、お店のマネージャーとして数名の女性がいる程度でした。

私自身は、入社する際「10年続ける」を目標にしました。その理由は、就職活動の際に大学のゼミの教授から言われた「どんな会社でも10年はいないとわからない。まずは10年頑張れ」という言葉が心に残っていたからです。

ただ10年と目標を定めていたものの、長く勤めてキャリアを積みたい、と考えていたわけではなかったんです。単純に「自分の食い扶持は自分で確保しよう」という考えから。だって、一生一人で生きていくかもしれないじゃないですか(笑)。

仮に結婚したとしても、パートナーが何らかの事情で仕事ができなくなることも考えられます。パートナーを一人養えるくらいの収入はめざしたいな、と思っていましたね。

なので、数年勤めて管理職の一歩手前くらいまできたときに、「自分のキャリアはもうこれで十分、ここに留まりたい」と思ったんです。でも、そんな甘い考えを会社は許してくれませんでしたが(笑)

上司からは「ここから上に行きたくない、というのは会社においてはありえない。現状維持は後退。そんな人間には評価はあげられない」と怒られ、そこからは考えを改めました。

田中さん 私も、初めから管理職や役員をめざして入社したわけではありませんでした。就職活動はバブル期で、比較的志望が通る状況でした。当時はシステムエンジニアという職業が脚光を浴びていましたが、自分には向いていないと思い一般企業に入ることにしました。

入社当時、総合職の同期の女性は7人しかいなくて、どこにいっても「女性なのに総合職なんだ」って言われるくらい珍しがられました。

そんな環境の中でも、良かったことは、システム部門で一緒に働く協力会社には女性がたくさんいらしたこと。女性の部長もいました。

協力会社の方々と一緒に、ひとつずつ目の前のプロジェクトをこなしていくうちに今のポジションになっていた、という感じですね。

栢原さん 私もみなさんと同じで、入社当初は「とりあえず3年」と思っていましたが、実は最初の1か月で早々に挫折しかけているんです(笑)。配属初日に熱を出してしまい、まだ有給もない中で欠勤。翌日出勤した際に上司から「根性なしでがっかりした」と言われました。それがショックで母親に「私ダメかもしれない」と相談したことを覚えています。

それでもなんとか3年続けたころに、やっと仕事のおもしろさがわかってきた。私が仕事を続けられたのは、お得意先の方に恵まれたこと。営業先を回っていく中で、お得意先の方々に励ましてもらったり、目標の数字が達成できたり、たくさんの貴重な経験をさせていただきました。

 

女性の自分が感じた違和感を取り除くことが、よりよい会社作りにつながる

――みなさん最初から管理職や役員をめざしていたわけではなく、目の前のことに精一杯取り組んでいくうちに現在のキャリアに至ったのですね。では、管理職や役員になることを受け入れるようになったターニングポイントはありましたか?

田中さん 34、5歳ごろ、あるプロジェクトでプロジェクトリーダーをしていたのですが、そこで大きな失敗をしました。その時にマネージャーにひどく怒られたのですが、それは失敗そのものに対する叱責ではなく、その後の対処のスピード感ややり方がよくない、というものでした。さらに上司は、協力会社のベテラン社員を私の指導係につけてくれて、仕事面だけではなく私の話し方から態度まで細かくご指導いただきました。

この経験がすごく私の成長の糧になっていて、仕事の本当の楽しさを知ることができた気がします。もしこの経験がなかったら、今でも漫然とただ働いていたかもしれません。

栢原さん その上司の対応は素敵ですね。叱責するだけではなく、その後のフォローを適切にしてくれる。

田中さん はい。私も今、当時の上司と同じ立場になってみてそう思います。男性の上司からすると、女性の部下を叱ることは、難しく感じる場合もあるかと思いますが、それでもきちんと叱ってくれましたし、その後のフォローとしてアドバイザーまでつけてくれました。

南里さん 私の場合は異動が転機でした。入社から法人営業担当でしたので3年に1度くらいのペースで異動があり、その間に出産も経験しました。営業が好きだったので、育休後も営業を続けたいと思い、実現したのですが、やはり現実的には両立はとても難しかったです。

そんな私に、上司は「働く時間の長さではなく、結果で示せばいい」と言ってくれていましたが、現実はそんなに簡単に済む話ではありません。自分だけが先に帰ることへの後ろめたさもありましたし、反対に私が帰ったあとの会議で大事なことが決まっていたり、会食に参加できなかったりすることへの疎外感もありました。

当時は、小さな子どもがいるかぎり、優先順位は家庭中心とならざるを得ないこともありましたので、このままではこの会社で勤め続けることは難しいのかな、と感じていたときに、女性活躍推進のプロジェクトメンバーに声がかかり、その後人事部に異動になったのです。それが大きな転機でした。

これまでの営業とは180度仕事内容が変わりましたが、自分の経験や悩んできたことがそのまま仕事になるという、やりがいや社会的意義が感じられる貴重な経験でした。自分が悩んできたことを解決しないままにしておくと、それは次の誰かの悩みになってしまうわけですから。

この部署では、たくさんアイデアや施策を出して、それを実行することができました。それを繰り返していくうちに、「人や会社を動かすことがおもしろいな」と思うようになりました。

栢原さん 理不尽だと感じることや納得できないことを解決したいという気持ちがモチベーションになる、というのは私もよくわかります。

私は入社して6年目で、労働組合専従職員になりました。労組の活動では「良心に従っていいんだ」「正しいと思うことをちゃんとやることが仕事なんだ」「そういう人にこそ人はついてくるんだ」ということを学びました。こうしたことに20代で気づけたことは、とてもよい経験だったと思います。

実は私自身、それまで心のどこかで「会社は理不尽なところ」という思い込みがあったんですよね。たとえば当時、なぜか女性だけ結婚すると結婚記念品がもらえるという制度があったり。会社の制度に違和感を持つことが多かったんです。

でも労働組合の活動として労働条件などを会社と交渉することで、「公平性」について身をもって学ぶことができました。ちなみに、その時一緒に活動していた労働組合の委員長が、今の弊社の社長です。

 

短時間勤務の管理職女性は私が初めてでした

廣松さん 私の転機は、育休が終わり会社に復帰した時でしょうか。最初に営業店を経験した後は本社のクレジット部門の担当になり、その後はだいたい3年ごとに業務内容が変わっていました。20代後半は仕事のことでくよくよ悩むことも多かったのですが、30代以降はそういったことを乗り越えて、とにかく仕事が楽しかったですね。

仕事を通じて自分が解放される感覚だったり、いろいろなアイデアや想いが仕事の中で実現されていくことだったり。他にも、成果が数字になって表れることや、お客さまやお店からの反応一つひとつが楽しくて、達成感ややりがいを感じていました。

そのような状況で、管理職になってすぐのタイミングで妊娠が判明。人事部門の部長から「どうするの?」と言われたことを今でも覚えています。

産休育休を取って、私が職場復帰する際に短時間勤務を申請したところ、社内では「廣松を管理職のままで戻すのか」という話し合いがあったそうです。当時は短時間勤務の管理職はおらず、会社にとってもすべてが初めてのことでした。

しかし、やはりこれからの時代、「子どもがいる人は管理職にはなれない」となったら、女性が上位職をめざさなくなる」と話をされた役員の方がいて、 結局、私は会社初の時短勤務の管理職として復帰しました。

 

――南里さんもおっしゃっていましたが、育児をしながら管理職でいるということは、当時はとても珍しく、また難しいことだったんですね。

廣松さん そうですね。私が育休から復帰した後に管理職の女性5人で作る女性活躍推進の委員会が発足し、メンバーとして参加しました。さらに次の年、私は人事部門に異動。異動を希望していたわけではなかったので、その辞令は実はとてもショックだったんですよね。大好きな仕事から引きはがされたという気持ちでしたが、それでも、人事として多く社員からさまざまな話を聞いているうちに、次第に考えも変わっていきました。

「こういう施策が足りない」「こういう施策があればもっと社員が長く働き続けられる」。問題点を見つけては解決に向けて動く、ということをしているうちにこの仕事もどんどん楽しくなってきました。

役員と触れ合う機会が増えて視座が高まったというのも、いい経験でした。

 

コロナの影響でやるべきことが早回しになった感覚はあります

――キャリアを形成していくにあたり、女性であることで苦労を感じたことはありますか?

南里さん あります。若手時代、担当の変更でクライアントにご挨拶に行ったところ、そこの中小企業の社長から「女性の担当は嫌だ」とはっきり言われました。そういう方も中にはいらっしゃるとは聞いたことはあったのですが、実際に言われたのは初めてだったので、やはりショックでしたね。

他にも拠点長をやっているときに、ある会社の担当になって2年くらいたってからお客さまに「今だから言うけど南里さんが普通の人でよかった」と言われました。

女性の拠点長と聞いて、カツカツ音のするピンヒールの、お化粧ばっちりで高圧的な女性がくるのでは、と思っていたそうです。でも、実際にやってきたのは、そういうイメージとは程遠い私だった(笑)。女性リーダー=高飛車というステレオタイプの刷り込みがまだまだあるのかと、ちょっと、笑ってしまって。

栢原さん 私も同じことを言われました。2020年から3年間、九州支社の支社長だったのですが、私が実際現地に着任するまで、女性支社長に対して現地の得意先も同業である他社の食品メーカーの支社長さん達も同じような怖いイメージを持っていたみたいです。

南里さん もちろん嫌なことばかりではなくて、女性であることで名前や顔をすぐに覚えてもらえるという利点もあります。でもそういう固定観念は、なかなか拭うことはできないですよね。

田中さん 銀行で言うと、ほんの30年前まで、社内結婚をすると女性の方が退職する、という暗黙のルールがありました。今では社内結婚をしても女性が仕事を続けるのは当たり前です。それを考えると女性活躍に関する30年の進歩はすごいなと思いますよね。

一方で私が気になっているのが、まだまだ長時間労働がなくならない、ということ。実際長く働くことを評価する上司が多いのも事実です。この風土を変えていくためにはもう少し時間がかかりそうだなと思っています。

他にも営業職がどうすれば自宅で仕事ができるのか、なども並行して考えていかなくてはいけないと思っています。

 

会社の垣根を超えて、社会全体で大きな輪を作り、回していくことが大切

廣松さん 女性が結婚や出産をしてからも自分らしく働き続けるためには、女性だけではなく男性がどれだけ家庭にコミットするかということも大切になってくると思います。

仕事と家庭の両立、というと女性だけのことのように言われますが、これからは男性もどうすれば両立できるかを考えていかなくてはいけません。

私自身も仕事と家庭が両立できているのは夫が一緒にやっているからなのですが、「廣松さんは、仕事と家庭を両立していて偉いね」と言われることはあるものの、夫は誰からも褒められません(笑)。男性も家庭に関わることがあたりまえ、という風潮にしていきたい。ですので、弊社では「男性の産休(産後8週以内)取得率」や「1か月以上の育休取得率」などをKPIとして公表し、夫婦共に仕事と育児を両立しているかを数値で可視化して追っています。

ただ、一つの会社の中だけでこのような取り組みをしても効果はなかなか上がりません。弊社の女性社員が家庭で育児をしている分、別の会社にいる彼女の夫が長時間働いている、ということになっていては意味がないですから。

栢原さん 今回のメンバーでメーカー勤務なのは私だけですが、支社長時代、男性社員に「あなたは1日のうち仕事している時間が長すぎて、結果的に、家庭的責任を負えていないよね?」ということを言うと、「得意先が働いているんだから仕方ない」と反論されることがありました。

でも、お得意先の中にも、早く帰って子どもをお風呂に入れたいと思っている人がいるかもしれないですよね。

そこまで考えて、5時以降はお互い電話をしないという風に、ルールを決めていく必要があると私は思います。

世代が変わっていくうちに自然に変わる部分もあるとは思うのですが、それではやはり時間がかかりすぎ。現役世代の時間を確保するためにも、早急に取り組むべき課題だと思っています。

南里さん 一社だけの話ではないんですよね、相互に関連していることなので、会社の垣根を越えてみんなで少しずつ歩んでいきましょうと。そうしないと、いつまでもネジが巻かれません。

このような交流の場で話題にしたり、身近な上司に訴えたり、自分の周辺に働きかけたりしながら、企業同士も公的に連携して進められていけるといいですね。

田中さん コロナがあったことで、考え方が加速した部分もありますよね。早く帰ることに後ろめたさを感じにくくなったというか。コロナ禍がよかったとは言いませんが、時計の早回しにはなったと思っています。

栢原さん コロナ以前は、あれだけみんな無理無理って言ってたのに、いざとなれば帰れるよねって思いました(笑)。

 

管理職になって自分がやりたいことをどんどんチャレンジしてほしい

――これからキャリアを作っていく若手の読者に向けて、管理職の立場から感じることや伝えたいことはありますか?

廣松さん まずは、そもそも管理職に魅力を感じないという人が増えていることに懸念を感じています。管理職=プライベートもなく働かなくてはいけない、どこに異動するかわからない、というイメージを持っている人が多く、マイナスポイントばかりが目立って見えるのが理由だと思います。弊社では今、管理職の働き方改革に着手し始め、意識と行動の両面から取り組みを始めています。

栢原さん 弊社でも管理職になることを躊躇する社員は一定数いますね。女性だけではなく、男性も「管理職はやりたくない」という人がいるほど。そのぐらい、現状の管理職の働き方は大きな問題だと思っています。ワークインライフで自己実現するという考え方に応えきれていないですね。

南里さん 管理職に限らず、上位職に上がることの魅力が伝えられていないのは残念ですよね。私は、上位職ならではの喜びややりがいもあると実感しています。それは、人材育成だったり、この位置に立たないと見えないものあるということだったり。

他にも、上位職になると自分が若い頃に違和感を感じたことを「やめる」という決断や、時代に合った運営をすることが出来るようになります。私は、子どもがいて長時間労働ができなかったし、やりたくなかった。だから管理職になった今は、長時間労働をできるだけ減らす工夫をしています。

もちろんそのルール作りは独断ですることはありません。ルール変更をみなさんに提案して、一緒に考えて進めることが大事。そうやって管理職が楽しそうに働いている姿を、常に見せていかないといけないと思っています。

田中さん 南里さんと同じで、私も管理職になってすぐに「早帰りデー」や「みんなで一斉に休暇を取る日」というものを作りました。もちろん部下全員が賛同してくれたわけではありません。定時で帰ることにまったく意義を感じない、という人たちもいました。

取り組みの本当の目的は、みんなが定時で帰るということではなく、自分の意志で帰りやすい雰囲気を作ることでしたから、この点は成功したと思っています。

 

後輩のスキルが上がったり感謝されたりするとき、管理職をやってよかったなと思う

南里さん 管理職の大きな仕事の一つとして人材育成があると思います。先日、5年ほど前に転勤していった後輩と久しぶりに会ったところ、「南里さんと働いている時にできなかったことが、いまは経験として生きて、できるようになった」と言われました。

何年も前に部下だった方から年月を経て感謝をされると、ぐっとくるものがありましたね。

このように、管理職だからといって、何かを教えてすぐに相手から反応があることはないかもしれないけれど、後輩に少しでも影響を与えられるのはうれしいことですよね。そこは、私のビジネスライフの中の重要なエネルギー源となっている気がします。

田中さん 若者が育っていったり、スキルが上がっていったりするのを見るのは本当にうれしいですよね。

栢原さん 私から、管理職になるべきかどうか悩んでいる人にかける言葉があるとすれば、何をそんなに躊躇してるの。今までと違う景色が見られるよ!と言いたいですね(笑)。周りから声がかかっている時点で、一定の評価を受けているわけだから、自信を持っていいと思います。

南里さん 仮に失敗したとしても、あなただけの責任ではないんですよ!と言いたい。

廣松さん 特に女性の場合、「今後、結婚したら、子どもが生まれたら、仕事と両立できるだろうか?」など、まだ迎えていないライフイベントを先取りして不安になる人が多いように思います。これは男女関係なく言える話ですが、不安の先取りは、すごくもったいない。自分で自分にブレーキをかけないで、ぜひトライして欲しいなと思います。

 

変革期を乗り越え、新たな時代を切り開いてきた女性役員の皆さんの本音トークは、いかでしたか。今回の対談でも、女性リーダー人材の育成は、女性だけではなく、男性の働き方も含めて変えていくことが大事であること、またこういった女性リーダー育成につながる取り組みは一企業だけではなく、企業の枠組みを超えて取り組んでいくことも必要であるというお話がありました。

企業での女性活躍を推進する取り組みは、政府においても様々に行われています。最後に、その事例として、経済産業省が実施している、「女性のキャリア形成支援」と「男女問わない両立支援」を両輪で推進する「なでしこ銘柄」や、企業における女性リーダーの育成を目的とした施策についてご紹介します。

 

経済産業省が実施している施策

なでしこ銘柄

女性活躍推進に優れた上場企業を銘柄として選定し、投資家の方に紹介することで、各社の取り組みを加速化することを目的に経済産業省と東京証券取引所が共同で実施しています。

令和5年度は、「共働き・共育てを可能にする男女問わない両立支援」についての評価を拡充し、「採用から登用までの一貫したキャリア形成支援」とともに両輪で進めている企業を「なでしこ銘柄」として選定予定です。その中でも特に「共働き・共育てを可能にする男女問わない両立支援」についての取組が優れている企業を、新たに「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」として選定することで、男女問わないキャリアとライフイベントの両立を推進しています。

なでしこ銘柄について:
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/nadeshiko.html

 

女性リーダー育成研修「Women’s Initiative for Leadership(通称WIL)」

民間企業の女性リーダー人材の育成を目的として、経営者に必要な高い視座の獲得と企業横断的な人的ネットワーク構築の機会を提供することを目的とした研修で、2015年からスタートし、2023年度までに8期のプログラムを実施しました。延べ265人が参加し、受講生から女性役員も誕生しています。

WILについて:
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/wil/index.html

 

クロスカンパニーメンタリング

女性の昇進意欲向上やリーダーシップ向上への後押しを目指し、さらにメンターとなる役員側の意識改革を図ることも目的に、2022年度に実施した企業横断型のメンタリングプログラムです。実施前、参加者のうち昇進を「強く望んでいる」、「望んでいる」と回答した女性は3割弱でしたが、実施後は約7割に大きく増加するなどの成果を上げました。企業や民間団体でも同様にクロスカンパニーメンタリングを実施できるようノウハウをまとめたPLAYBOOK*が公開されています。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/wil/R4playbook.pdf