プロアスリートから一般の方まで幅広い層にコンディショニングを手がける「R-body」へのインタビュー後編。今回は、R-body代表の鈴木岳.さんと、聖路加国際病院附属クリニック「聖路加メディローカス」で“カラダを整える”ためのコンディショニングサポートを行う井出和徳さんに、肩こりや膝の痛み、腰痛が改善した事例や、運動のモチベーションを保つコツについて話を伺いました。
膝の痛みに悩んでいた女性が、階段を小走りできるまでに回復しました。
―聖路加メディローカスでR-bodyのサポートを受けた方の関節の可動域が見違えるように広がったという話を伺いました。他にエピソードがあれば教えていただけますか。
井出:はい。まず肩に痛みがあり、腕が上がらないというお悩みを抱えた男性がいらっしゃいました。背骨にある胸椎を動かすトレーニングを行っていただいたところ、肩の痛みがなくなり、趣味のゴルフが問題なくプレーできるようになりました。ただゴルフ仲間とは、カラダの痛みに関する話題についていけなくなったと話しておられましたね(笑)。
もう一人は、膝が痛くて階段の昇り降りができなかった女性の方です。この方には股関節に対する動作教育を行ったところ、膝の痛みがなくなって、階段を小走りできるまでに回復しました。そこで運動の大切さを身に染みて感じたようで、今は週二回欠かさず聖路加メディローカスに通っていただいています。
―効果を実感できるまでどれくらいかかりますか。
井出:肩に痛みがあった男性は、半年ほどかかりましたね。膝の痛みがあった女性は、一回のセッションでも効果は見られたのですが、この時点では元の状態に戻ってしまう可能性がありました。そのためトレーニングを繰り返し行うことで、正しい動作パターンが定着して、1カ月後には痛みのない状態が続くようになりました。
膝の悩みを抱えている方は特に多いですね。以前、膝にヒアルロン酸注射を毎週打っていた方がR-bodyのトレーニングを受けてくださったのですが、「注射を打つ必要がなくなった」と話されていました。
今僕らがご紹介した事例は、全然珍しいことではありません。正しい動作をマスターすれば、どんな痛みや不調も改善に向かう可能性があります。
医師による治療と生活習慣に潜む原因へのアプローチ、その両方が必要なのです。
―病気の治療は医師に任せて、運動器の部分をみてくれるのですね。
はい。我々は医療従事者ではないので、痛みのある患部へは一切アプローチしません。痛みの改善のために病院は絶対に必要で、僕らはその下支えになりたいと考えているんです。腰痛があれば医師に診てもらう。その原因が生活習慣のどこに潜んでいるかを我々が探っていく。その両方のアプローチが必要だと考えています。
―ただ、運動が続かないという人も多いと思います。モチベーションを保つコツはありますか。
運動が続かない理由って、その運動をする目的やゴールを見失っているときだと思うんです。だから、僕らはカラダの問題点や注意点などを細かくロジカルにお伝えしています。「このために必要な運動なんだ」ということが分かると、自然と目的意識が芽生えて、モチベーションが保てるのではないかと考えています。
―メンタル面ではどのような影響があるとお考えですか。
仕事中に腰が痛くなる人は、長時間働いても痛くならないカラダ作りをしたいと思いますよね。カラダの不調はカラダだけでなく、さまざまな部分へ波及します。誰だって痛みを感じると気分は下がるし、何もしたくなくなる。反対に、カラダのコンディションが整うとアクティブになって、メンタルへの良い影響も間違いなく出てくると思います。
―カラダ作りには食事の管理も大切でしょうか。
もちろんです。R-bodyでは食事、栄養に関するアドバイスも受けることができますので、お気軽にお尋ねください。多くのアスリートに関わってきた経験からもお伝えできることがあります。
日本における“コンディショニング”という概念が、世界に広がるようになっていく。
―鈴木代表は運動も「予防医療」の一つと捉えていらっしゃいますよね。
はい。「医療」と「運動」の領域があって、僕らはそれらをつなぐ架け橋のような存在です。どちらも必要なものですが、現状はそれぞれが独立して機能していることが多いので、この2つの領域を連携させたいんです。
実は2021年の東京オリンピックでは、選手村にある医療施設とフィットネス施設との連携が取れるような仕組みを取り入れました。これが関係者の方々にも好評だったので、医療と運動を連携させる“コンディショニング”という概念がグローバルスタンダードになっていくと確信しましたね。すでにパリのオリンピックの組織委員の方とも話をしましたし、医療とコンディショニングの連携は選手にとっても喜ばしいことであると思っています。
―最後に、健康的なシニアライフを望む「優遊自適」の読者へメッセージをお願いします。
将来を想像して欲しいのですが、家族と出かけた先に小高い山があるとします。お孫さんがその山を登りたいと言った時、あなたはお孫さんと手を繋いで登りますか?それとも、お孫さんを山の麓で待っていますか?それを決めるのは自分次第ですが、健康であるということが人生の選択肢を増やしてくれるはずです。
また、高齢になればカラダが思うように動かないと思いがちですが、良好なコンディションを維持することで、今よりもっと楽に生活を送れる可能性が高まります。正しい動作が一度身に付けばそれは一生ものですから、健康への投資はぜひ元気なうちから始めて欲しいですね。