今回は「聖路加メディローカス」連載の第2弾として、所長の本多一文先生にインタビューを実施。医療現場でのリアルなお話とともに、会員制健康サービスの特徴についても伺いました。
Medical(医療、医学)とLocus(場所)を重ねた「メディローカス」
―聖路加を「せいろか」と呼ぶ方が多いですが、正しくは「せいるか」なんですね。
はい。「聖路加(せいるか)」は、聖人ルカの名前にちなんでいます。「メディローカス」は、医療・医学を意味する「Medical」と、場所や活動の中心を表す「Locus」を合わせた言葉で、医療を行う場所という意味です。
―聖路加メディローカスはどのような施設ですか。
聖路加メディローカスのある大手町では、かつて海外の金融機関や外資系企業を誘致して、国際的なビジネスタウンを目指す構想がありました。そこで、開業の際には外国籍の方にも英語で高度な診療が気軽に受けられるクリニックを目指したと聞いております。昔ほど大手町は国際色豊かな街ではなくなりましたが、現在も8%ほどの割合で外国籍の方に来院いただいており、医師や看護師、事務スタッフともに英語で対応できる体制が整っています。
―外来ではどのような診療を行っていらっしゃいますか。
一般内科や心療内科、皮膚科、放射線科など様々な診療科があります。特にニーズの高い女性診療科は、予約が3カ月待ちの状況です。私は一般内科を総合的に診る領域で診療を行っています。どのような症状の方でも幅広く受け入れ、必要に応じて各専門医につないでいます。
―母体である聖路加国際病院との違いはどんなところですか。
当院は聖路加国際病院附属クリニックなので、入院用のベッドがありません。そのため入院の際には、聖路加国際病院をご案内しております。診療面では、画像診断機器が充実しているのが大きな特徴ですね。院内には、PET-CTやCT、MRIといった高度の検査機器を揃えています。他にもマンモグラフィや内視鏡、エコーを利用した検査なども可能で、質が高く幅広い検査ができる設備を備えているのも特筆すべき点といえましょう。特殊な検査や入院が必要になっても、聖路加国際病院や他の病院をご紹介してスムーズに連携を図っているので、安心して検査に臨んでいただきたいですね。
他院とはひと味違う、「予防医療」を極めた人間ドックとは?
―聖路加国際病院は「人間ドックのパイオニア」として有名ですが、その理由を教えてください。
「人間ドック」という言葉は、聖路加国際病院の名誉院長でいらっしゃった日野原重明先生が生み出したと聞いております。そこから、人間ドックの草分け的な病院として認知されていったようです。私どもはこの伝統を受け継いだ会員制の健康クラブ「聖路加メディローカスクラブ」を運営しております。
―聖路加メディローカスクラブの会員は、人間ドックが年2回受診できると伺いました。
はい、当院の人間ドックは「基本健診」「がん検診」「血管系検診」の3種類から組み合わせて受診いただけます。3大疾病を含む基本健診は年に1回、がん検診と血管系検診は初年度は両方、2年目以降から交互に受けていただくのが基本のコースです。がん検診は、聖路加国際病院では受けられない「PET-CT検査」が含まれており、早期がんの発見に非常に役立ちます。血管系検診は、血管による脳梗塞や心臓病などの予防に役立つでしょう。
―「一人ひとりに寄り添った検診」がテーマだそうですね。
そうですね。聖路加国際病院に隣接した検診専門の施設「予防医療センター」では、1日100人以上の方の人間ドックに対応していますが、当院は1日5〜6人しか対応しません。受診者にとってベストな時間配分で、お待たせすることなく、ゆとりのある検診を受けていただけます。気持ちに余裕が生まれるので、ストレスのない優雅な検診になりますよ。私どもは少人数制で運営していますから、医師やスタッフの細かい気配りが届く環境が整っていると思います。
―これまで早期発見・治療につながった事例はありますか。
もちろん、数え切れないほどあります。がんの例でお話しすると、症状がなく初期の検査で異常も全くみられなかった患者さんに、PET-CT検査でがんが見つかり早期治療につながった事例がこれまで沢山ありました。特に悪性疾患の場合、症状が出てからでは手遅れになりますが、症状が出ないうちや早期の症状の段階で対処すると、その後の治療がすごく楽になるんですよ。
例えば、早期の胃がんは内視鏡手術で取り除くことができますが、発見が遅れるとお腹を切る必要が出てくるかもしれません。患者さんの身体の負担を減らすためには、やはり早期診断と早期治療が重要なんです。聖路加メディローカスの会員さんで「手遅れになってしまった」という例は幸いにして一度もありませんので、これからも聖路加の伝統である予防医療を忠実に守っていきたいですね。
―人間ドックは何歳まで受ける必要がありますか。
これはそれぞれの方の考え方によりますね。100歳を超えてもご活躍された日野原先生のように、仕事もして元気に長生きしたいという方は、継続的に人間ドックを受けていただくことをおすすめしています。当院では若い方からご年配の方まで、幅広い年代の方が人間ドックを定期的に受診されています。
―聖路加メディローカスの会員は、他にどのようなメリットを享受できますか。
会員さんには忙しい経営者の方や、健康意識の高い40〜70代の方が多いので、より細かくスケジュールを調整するように努めています。検診の結果、必要があれば優先的にベッドをご用意したり、然るべき診療科へ迅速につないだりしています。枠が空いていなくても、会員さんのご都合を優先して対応することは結構あります。
なにより聖路加国際病院と他の医療機関とのダブルの連携による、強固なバックアップ体制が一番のメリットではないでしょうか。人間ドックを受診した後の経過観察や治療も専門医がしっかりフォローしますので、ご安心ください。お一人おひとりと継続的にお付き合いして、病気の早期発見・早期治療に努めております。
世界トップレベルの医療と人の優しさが、聖路加の変わらぬ伝統
―国際的な医療施設評価機関であるJCI(Joint Commission International)の認定を、2021年に更新されたと伺いました。
はい。会員制健康クラブは全国に沢山ありますが、聖路加はどこよりも「医療の質」を重視しております。特に放射線科は他院と比較しても大規模です。放射線のデータを読み取る読影医はひとつの病院に通常4、5人しかいないのですが、聖路加には本院とあわせて20人ほどの読影医がおります。
技師も多くのトレーニングを積んでおり、優秀な技師が揃っています。例えば、検査で技師が「脳梗塞があります」と判断することも珍しくありません。それを放射線科の担当医につないで患者さんと話をし、その日のうちに入院処置をとることも。優秀な技師がいるからこそ、当院では迅速な判断や治療ができているのです。
―医師とスタッフとの連携や教育についてはいかがでしょうか。
実は、聖路加国際大学は日本で初めて看護学部を設置したと言われていまして、看護師も非常に優秀なんですね。ですので、医師の立場である私たちも彼らの意見を尊重しております。もちろん看護師だけでなく、先ほども申したように技師とも話し合いながら、チームで連携して最良の医療を行っております。
それと、人が優しいのも特徴でしょうか。私も一度患者として聖路加国際病院にかかったことがありますが、非常に物腰柔らかな印象を受けたのを覚えています。看護師さん達は大学でキリスト教の愛の精神に則った教育を受けていますので、それで優しいスタッフが多いのだと思います。
―最後に、今後の展望と読者にメッセージをお願いいたします。
私どもが目指すものは、やはり「質の高い医療」と「伝統的な人の優しさ」で、患者さんがリラックスして話せるような場を提供することです。中には院内に豪華なソファがたくさんあったり、ロビーの真ん中にグランドピアノが置いてあったりと、ゴージャスな内装に力を入れている病院もあります。しかしインテリアが豪華であっても、肝心の医療の質が悪くては本末転倒です。当院では医療の質を最優先にし、その上で居心地の良い環境づくりに努めております。
聖路加メディローカスの入会に年齢制限はございません。いくつになっても健康で元気で長生きしたいシニア層の方々は、ぜひ入会をご検討いただければと思います。