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60代に近づき、これからの年金暮らしに不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
じつは、年金受給者全体の半数近くが「年金を用いて、日常生活を送ることができている」と回答していることが2020年の世論調査で分かっています。
しかし、年金だけを頼りにした生活にはゆとりがなく、場合によっては赤字になることも考えられるでしょう。
この記事では、年金暮らしの収支を公的データから算出しました。
老後の年金暮らしに向けてやるべきことを整理しましょう。
年金暮らしをする場合の生活費は?
まずは、年金暮らしの生活費について試算しましょう。
ここでは、政府により行われた家計調査のデータを用いて、60代の年金受給者の平均的な生活費について試算します。
なお、ここで紹介する数値はあくまで統計から算出した平均的な値です。個々人の生活状況で変動することに注意してください。
自分の生活と照らし合わせながら確認していきましょう。
夫婦同居での生活費
家計調査によると、年金暮らしをしている60代夫婦の1ヶ月間の一般的な生活費は、約274,000円です。
家計調査の統計をもとに、生活費の内訳を算出しました。下表をご確認ください。
夫婦の年金暮らしにかかる生活費(月間)の内訳 | ||
名目 | 費用 | 全体の割合 |
食料費 | 70,000円 | 25.5% |
住居・ライフライン費 | 35,000円 | 12.8% |
交通・通信費 | 30,000円 | 10.9% |
衣類・家財費 | 16,000円 | 5.8% |
医療費 | 16,000円 | 5.8% |
個人住民税など | 12,000円 | 4.4% |
社会保険料 | 20,000円 | 7.3% |
その他娯楽費 | 75,000円 | 27.4% |
合計 | 274,000円 | 100% |
一人暮らしでの生活費
家計調査によると、年金での一人暮らしにおける1ヶ月間の一般的な生活費は、約145,000円です。
家計調査の統計をもとに生活費の内訳を算出すると、以下のようになります。
単身の年金暮らしにかかる生活費(月間)の内訳 | ||
名目 | 費用 | 全体の割合 |
食料費 | 36,000円 | 24.8% |
住居・ライフライン費 | 26,000円 | 17.9% |
交通・通信費 | 13,000円 | 9.0% |
衣類・家財費 | 9,000円 | 6.2% |
医療費 | 8,000円 | 5.5% |
個人住民税など | 6,000円 | 4.1% |
社会保険料 | 5,000円 | 3.4% |
その他娯楽費 | 42,000円 | 29.0% |
合計 | 145,000円 | 100% |
年金暮らしをする人の年金受給額は?
年金暮らしをするうえでの平均的な年金受給額について紹介します。
一般的な生活費と比較することで、年金暮らしではどの程度の生活が可能なのか判断することができます。
厚生労働省の発表によると、令和元年度の平均年金月額は老齢基礎年金で55,946円、厚生年金の場合は144,268円(+老齢基礎年金)でした。
夫婦で同居している場合と、一人暮らしの場合、それぞれの受給額を確認していきましょう。
なお、これらの数値はあくまで平均的なものであり、受給額を保証するものではありません。
夫婦同居での受給額
年金には、国民全員が支払う老齢基礎年金(国民年金)と、会社員が支払う厚生年金の2種類があります。
会社員の場合はこれら2つを合わせた受給が可能です。
たとえば、会社員の夫と無職の妻が同居している世帯で考えてみましょう。
その場合は、夫の厚生年金に加え、夫と妻それぞれの老齢基礎年金を合わせたものを受給できます。
令和元年度の平均年金月額を割り当てると、夫婦同居世帯での受給額は以下のようになります。
- 夫の厚生年金:144,268円
- 夫と妻の老齢基礎年金:55,946円×2=111,892円
- 合計:256,160円
夫婦同居での一般的な生活費は、274,000円と紹介しました。ですので、平均的な生活から出費を2万円ほど節約することができれば、年金のみで過ごせることが分かります。
ただし、「住居費」が35,000円であり、自宅を所有していることが前提です。賃貸の場合は、この金額が上がることもあるので注意しましょう。
夫婦同居の年金暮らしであったとしても、老齢基礎年金のみでの生活は厳しいことを覚えてきましょう。
一人暮らしでの受給額
老齢の単身世帯における厚生年金に老齢基礎年金を合わせた受給額は、以下のとおりです。
- 厚生年金:144,268円
- 老齢基礎年金:55,946円
- 合計:200,214円
60代無職の単身世帯の平均的な生活費は、145,000円です。よって、平均的な生活であれば年金のみで過ごせることが分かります。しかし、こちらも自宅を所有していることが前提です。
また、単身の場合であっても老齢基礎年金のみでの生活は厳しいことが予想されます。年金暮らしで生活を続けるためには、厚生年金の受給対象であることが必須と言えるでしょう。
年金暮らしの税金や確定申告とは?
公的年金(老齢基礎年金や厚生年金など)は「雑所得」として課税の対象となり、確定申告が必要です。
しかしながら、年金受給者の確定申告手続きの負担を減らすため、公的年金では「確定申告不要制度」が設けられています。
制度の対象となるのは下記2つの要件に該当している場合です。
- 公的年金の収入金額が年間合計400万円以下であること
- 公的年金以外の所得が年間20万円以下であること
厚生年金と老齢基礎年金を合わせた、一人当たりの平均的な年金受給額が20万円程度でした。そのため、ほとんどの年金暮らしの人が確定申告はしなくても大丈夫です。
なお、確定申告不要制度の対象になっている人でも、確定申告を行うことで所得税の還付を受けられることがあります。
たとえば、マイホームを住宅ローンで取得した場合や、一定額以上の医療費を払った場合、災害や盗難にあった場合です。
ご自身の状況に合わせて、確定申告を行いましょう。
老後も安心した年金暮らしをしていくためには?
ここまで、年金暮らしにおける収支を計算してきました。
年金だけでの生活には不安を感じる人も多いかと思います。
老後も安心して過ごすためには対策を考える必要があるでしょう。
ここからは、年金暮らしを安心して続けるために役立つことを紹介します。
- 年金以外の収入源を作る
- 年金制度を追加利用する
- 趣味の充実
それぞれ順番に解説していきます。
年金以外の収入源を作る
多くの会社では60〜65歳にかけて定年を迎えますが、退職して間も無いうちはまだまだ働く意欲のある人も多いはずです。
老後のセカンドキャリアとして、高齢者を雇う会社での再就職や、これまでのスキルを活かした起業といった手段が挙げられます。
また、不動産運用の準備や定年前からの副業など、老後の収入源を確保するために年金受給前からできることは意外と多いです。
自分ができることから取り組んでいくことをおすすめします。
年金制度を追加利用する
老後の収入源を確保するために、公的年金以外にも追加で利用できる年金制度を始めることも有効です。
追加利用できる年金制度には以下のようなものがあります。
- 厚生年金における家族手当のような存在である加給年金
- 毎月の積み立て支払いを通して年金を受け取る個人年金保険やiDeCo
とくに個人年金保険など、定年退職前から準備を始められることは多いです。いまから取り組めることを探してみるとよいでしょう。
趣味の充実
老後に収入が低くなったとしても充実した毎日を送るために、老後も楽しめる趣味を見つけておきましょう。趣味があれば老後をよりよく過ごせます。
例として、ウォーキングや登山、ヨガなどは心身の健康の維持にも有効でしょう。
他にも、脳の活性化のために囲碁や将棋、楽器の演奏を始めるなど、頭を使う趣味も老後を充実させる趣味になると言えます。
まとめ
年金暮らしを続けるうえで、生活費用のすべてを年金収入で賄うことは難しいです。
しかし、安心した生活を送るためにいまから、もしくは60代になってからできることもたくさんあります。
自分の生活費用を計算し、老後の収入を確保する方法や、収入が少なくなったとしても自分らしく楽しめる生活がどんなものかを考えていきましょう。そうすることで、明るい老後を送ることができるでしょう。