「俳句の季語について知りたい」

「何かバリエーションが増えるものはない?」

季語はい句が生まれるたびに追加され時代と共に増えていくものです。

現在(2021年2月調べ)は、5,000を超える季語があり、今後も増えていくでしょう。

本記事では、各月ごとに使いやすい季語をピックアップして、例句と共に紹介します。

ぜひ参考にして、楽しく俳句を作るのに役立ててください!

俳句とは?季語はどうして必要なの?

俳句とは、5・7・5の17音の中で、自然を通して詠嘆を表現する文芸です。

同じ文芸の中で、川柳も5・7・5で詠まれます。

俳句と川柳との違いの1つが季語の要否です。

俳句は季語が必要で、川柳は季語を必要としません。

季語を知る前に、まずは季語について次の3つのことを確認しましょう。

  1. 俳句における季語の必要性
  2. 季語は実際の季節とずれている
  3. 季語は歳時記に載っている

それぞれ詳しく説明します。

(1)俳句における季語の必要性

俳句で季語が必要な理由は、次の2つです。

理由 詳細
俳句の決まりである 俳句は、発句という江戸時代の連句が独立したものです。発句には、必ず季語を入れる決まりがありました。その決まりが、俳句でも受け継がれています。
読み手に伝えたい情景を描いてもらえる 俳句は、短い音の中で伝えたいことをぎゅっと凝縮して表現しなければなりません。季語を入れることで、読み手に季節感や時間といったイメージを描いてもらいやすいのです。

このような理由から、俳句では句の中に1つは季語を入れます。

ただし、季語が2つ以上入る俳句や季語のない俳句もルール違反ではありません。

季語が2つ以上入る俳句は季重ねと言い、実際に次のような俳句があります。

  • 蛤の~ふたみにわかれ~ゆく秋ぞ|松尾芭蕉

「蛤」は春の季語、「ゆく秋」は秋の季語で、1つの句に2つの季語が入っています。

しかし、季語を複数入れたり、季語を入れなかったりする俳句は上級者向けテクニックです。

そのため、初心者は季語1つで伝えたいことを表現できるように練習しましょう。

(2)季語は実際の季節とずれている

俳句の季語は春夏秋冬ごとに決まっているものの、実際の季節感とずれていることがあります。

なぜなら、季語と関係の深い暦が実際の季節とずれているためです。

たとえば、8月は夏真っ盛りですが、暦上では初秋のため、秋の始まりとなります。

そのため、俳句で暑さがひと段落するという「処暑」という季語は、8月に属するのです。

さらに昔からある季語は旧暦にあわせられているもの。

たとえば、旧暦7月7月の「七夕」という季語は、新暦8月の季語となるのです。

本記事では暦にならい、次のような区分で季語を紹介します。

現在の月 暦の季節 二十四節気 日付
1月 新年・
仲冬~晩冬
正月・
小寒~立春
1月1日~1月15日・
1月5日頃~2月3日頃
2月 晩冬~初春 立春~啓蟄 2月4日頃~3月4日頃
3月 初春~仲春 啓蟄~清明 3月5日頃~4月4日頃
4月 仲春~晩春 清明~立夏 4月5日頃~5月4日頃
5月 晩春~初夏 立夏~芒種 5月5日頃~6月4日頃
6月 初夏~仲夏 芒種~小暑 6月5日頃~7月6日頃
7月 仲夏~晩夏 小暑~立秋 7月7日頃~8月6日頃
8月 晩夏~初秋 立秋~白露 8月7日頃~9月7日頃
9月 初秋~仲秋 白露~寒露 9月8日頃~10月7日頃
10月 仲秋~晩秋 寒露~立冬 10月8日頃~11月6日頃
11月 晩秋~初冬 立冬~大雪 11月7日頃~12月6日頃
12月 初冬~仲冬 大雪~小寒 12月7日頃~1月4日頃

俳句を作るときは季語を意識して、移り行く季節を敏感に感じましょう。

 

(3)季語は歳時記に載っている

季語は長い年月をかけて、時の俳人たちが増やしてきました。

そのため、現在5,000を超える季語があるので全ての季語を覚えることは至難の業です。

そこで、俳句をたしなむ人は歳時記を利用します。

歳時記とは、様々な出版社から刊行されている季語を掲載した本のことです。

出版社やテーマによって、掲載されている季語は異なります。

俳句を楽しむなら、歳時記を1冊は手元に置いておきましょう。

季語なし俳句ってどんなもの?|無季俳句を楽しもう

原則、俳句には季語が必要です。

しかし先述したように、季語なしの俳句(無季俳句)も存在します。

たとえば、小林一茶の次の句は無季俳句です。

  • 亡き母や~海見る度に~見る度に|小林一茶

一見、「海」が季語に思えるものの、実は「海」だけだと季語になりません。

このように、季節感を入れずに情景や心情を詠むということは可能です。

しかし、俳句初心者は季語を覚えるためにも、季語ありで句作しましょう。

春の季語|2月・3月・4月の季語一覧

季語について学んだところで、実際の季語を春夏秋冬順に見ていきましょう。

紹介する季語の中には、季節列が「春」と記載された言葉があります。

季節列が「春」の季語は、月に関係なく、春なら利用できる言葉です。

このような季語は、私たちのイメージに合った月に紹介しているため参考にしてください。

まずは、春の使いやすい季語を紹介します。

  1. 2月(晩冬~初春)
  2. 3月(初春~仲春)
  3. 4月(仲春~晩春)

2月の季語から順番に確認しましょう。

2月(晩冬~初春)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
春待つ 晩冬 春待つや~暁の明星~見し日より|宮津昭彦 春隣・春近し・春まぢか
立春 初春 立春の~米こぼれ~葛西橋|石田波郷 春立つ・春来る・立春大吉
春浅し 初春 白き皿に~絵の具を溶けば~春浅し|夏目漱石 浅春
春の雪 思ひ出し~思ひ出しふる~春の雪|正岡子規 春雪・牡丹雪・淡雪
春雷 再びの~春雷をきく~湖舟かな|富安風生 春の雷・初雷・虫出しの雷
節分 晩冬 節分や~梢のうるむ~楢林|綾部仁喜 柊挿す・豆撒・追儺
薄氷 初春 薄氷の~吹かれて橋の~重なれる|深見けん二 春の氷・氷解く・流氷
鶯や~起きねばならぬ~窓明り|星野立子 春告鳥・初音・鶯餅
白魚 初春 消えて雫~生きて目のある~白魚かな|正岡子規 白魚網・白魚舟・しらお
初春 紅梅や~枝々は空~奪ひあひ|鷹羽狩行 紅梅・白梅・枝垂梅・梅林

この他、2月は次のような季語があります。

 

分類 季語
行事 旧正月・針供養・初午・バレンタインデー
食べ物 蕗味噌・海苔・水菜・三葉・蒸し寿司・梅見酒
動物 猫の恋・猫さかる・雲雀
植物 蠟梅・蕗の薹・猫柳・いぬふぐり

初春である2月の季語は、冬の余韻を感じられるものが多いです。

「まだ寒いけど、春も近い」という意味の季語は、いずれも使いやすいでしょう。

また、2月の行事である「節分」や2月に咲き始める「梅」も使いやすい季語です。

3月(初春~仲春)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
雛祭 仲春 ちゝはゝの~ある子の幸や~雛祭|高橋淡路女 桃の節句・雛飾・雛あられ・雛流し・雛納め・菱餅・白酒
春の宵 目つむれば~若き我あり~春の宵|高浜虚子 宵の春・春宵
彼岸 仲春 毎年よ~彼岸の入りに~寒いのは|正岡子規 春分・彼岸入り・彼岸過ぎ・彼岸会・中日
雪解 仲春 冬晴や~雪解けてゐる~音羽山|日野草城 雪解水・雪しろ・雪解川・雪解風・雪汁・春出水
水温む 仲春 ひとつ足す~窓辺の木椅子~水温む|日下野由季 温む水
啓蟄 仲春 啓蟄の~蚯蚓の紅の~すきとほる|山口青邨 蟻穴を出づ・地虫穴を出づ・蛇穴を出づ・蜥蜴穴を出づ・熊穴を出づ
蝶を見し~こころそのまま~夜となる|阿部みどり女 初蝶・蝶生る
仲春 白樺の~雨につばめの~巣がにほふ|飯田龍太 初燕・飛燕・乙鳥・つばくらめ
蛤を~逃せば舌を~出しにけり|高浜虚子
椿 このごろの~夜の朧さや~白椿|正岡子規 白椿・紅椿・八重椿・乙女椿

この他、3月は次のような季語があります。

 

分類 季語
行事 曲水・西行忌・涅槃会
食べ物 田楽・目刺・干鰈・草餅・若布
動物 雉・駒鳥
植物 蒲公英・土筆・蕨・薇・野蒜・辛夷・沈丁花

3月の季語からは、だんだんと暖かくなる様子がイメージできるでしょう。

初めに雛祭りがあるため、3月の季語は雛祭り関連の言葉が多数含まれます。

また、雪解けが始まり、様々な動植物が動き始めることを表す季語も多いです。

春の季語3.4月(仲春~晩春)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
春の海 島々に~灯をともしけり~春の海|正岡子規 春の波・春潮・春風
行く春 晩春 ゆく春や~わが句情に~流さるる|山口青邨 春行く・春尽く・暮春・暮の春・春の果・春惜しむ・惜春・夏近し・夏隣
長閑 のどかさや~娘が眠る~猫が鳴く|正岡子規 のどけし・駘蕩
麗らか 三日うらら~菫一輪~かがみ見る|山口青邨 うらら・麗日
どこまでも~橋伸びてゆく~夜の朧|桂信子 朧月・朧夜・星朧・鐘朧
潮干狩り 晩春 足どりや~潮干狩戻りの~もの提げて|清崎敏郎 汐干狩・潮干・磯遊び
晩春 割烹着~まつさら鰆~一尾かな|里見梢
晩春 雨ながら~今此の時の~花盛り|高浜虚子 花弁・花盛・花の雲・花筏・花見・花冷え
菜の花 晩春 やせ村に~今菜の花の~さかり哉|正岡子規 油菜・菜種の花・花菜
晩春 さくら咲き~去年とおなじ~着物着る|桂信子 初桜・山桜・八重桜・枝垂桜

この他、4月は次のような季語があります。

 

分類 季語
行事 エイプリルフール・イースター・仏生会
食べ物 桜漬・菜飯
動物 桜鯛・鰊・若鮎・小鮎・鮎の子・百千鳥・お玉杓子・蚕
植物 木蓮・葱坊主・藤・菫・チューリップ・赤貝・韮・鮑

4月は春真っ盛りで明るいイメージの季語が大部分を占めます。

夏の季語|5月・6月・7月の季語一覧

暦上の夏は、5月・6月・7月です。

生命活動の盛んな季節である夏の季語には、動植物に関連する言葉が多くあります。

また、暑さに関する季語があることも、夏の季語の特徴です。

春の季語と同様、夏全般に使える季語は季節列に「夏」と記載しています。

それでは、使いやすい夏の季語を、各月ごとに見ていきましょう。

  1. 5月(晩春~初夏)
  2. 6月(初夏~仲夏)
  3. 7月(仲夏~晩夏)

まずは、5月から確認します。

5月(晩春~初夏)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
八十八夜 晩春 子が使ふ~八十八夜の~文机|関戸靖子
端午 初夏 端午の日~子供の夢を~魚の喰む|松下千代 五月の節句・子供の日・菖蒲の節句・菖蒲の日・幟・柏餅・菖蒲葺く・菖蒲湯
立夏 初夏 指くめば~心音の波~立夏かな|野澤節子 夏立つ・夏に入る・夏来る・夏めく・夏兆す
母の日 初夏 母の日に~生れたりけり~果報者|山口青邨
衣更 初夏 ミシン踏む~足のかろさよ~衣更|杉田久女 衣更う
薄暑 初夏 薄暑来ぬ~人美しく~装へば|星野立子
青嵐 ぬきんでし~松のことさら~青嵐|鈴木真砂女 風青し・夏嵐
風薫る かきわける~白のゝれんや~風薫る|正岡子規 薫風
若葉 初夏 目を病むや~若葉の窓の~雨幾日|森鴎外 新緑・みどり・緑さす・万緑・若葉風・若葉雨・若葉寒・若葉冷・柿若葉・椎若葉・若楓・青葉
葉桜 初夏 嵐山~葉桜はあれと~若楓|正岡子規 花は葉に・余花・残花

この他、5月は次のような季語があります。

 

分類 季語
行事 夏場所
食べ物 新茶・走り茶
動物 子猫・鰹・閑古鳥・時鳥
植物 牡丹・薔薇・芍薬・虞美人草・ポピー・卯の花・夏蜜柑・甘夏・筍・空豆・蕗

5月の季語は、夏の訪れを予感させる特徴があります。

若葉や葉桜といった、木々が青々とする様子が目に浮かぶような季語が多いです。

季語だけでも、夏本番に向けて動植物が活発に動く情景が目に浮かぶでしょう。

6月(初夏~仲夏)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
田植え 仲夏 うら若き~夫婦二人の~田植哉|正岡子規 田を植う・田植歌・代掻・早苗・玉苗・早苗籠
父の日 仲夏 長く生きて~父の日は日の~永いさかり|荻原井泉水
夏至 仲夏 梅雨ながら~且つ夏至ながら~暮れてゆく|相生垣瓜人 短夜・明易し
梅雨 仲夏 梅雨深かむ~空を抜け得ず~船の笛|河野南畦 梅の雨・梅雨空・梅雨雲・走り梅雨・五月雨・青梅雨・空梅雨・梅雨寒・梅雨闇・五月闇
五月晴れ 仲夏 見えそめて~青雲うれし~五月晴|正岡子規 梅雨晴・梅雨晴間
お刺身の~鮎の眼はまだ~生きてゐる|山口誓子 鮎釣・年魚・香魚
夏蝶 やさしさは~宙下りかゝる~揚羽蝶|山口誓子 夏の蝶・揚羽蝶・梅雨の蝶
蝸牛 ぬらくらと~蝸牛の文字の~覚束な|正岡子規 かたつぶり・でで虫・でんでん虫
紫陽花 仲夏 紫陽花に~色めく風と~なりにけり|稲畑汀子 七変化・手毬花・梔子の花
夏草 夏草に~まだ見ぬ人の~行へ哉|正岡子規 草茂る

この他、6月は次のような季語があります。

分類 季語
行事 ダービー
食べ物 麦飯
動物 蝙蝠・蛍・蛞蝓・蚯蚓
植物 若竹・枇杷・杜若・梔子の花・黴・青梅・玉葱・バナナ・紫蘇

6月は梅雨の季節のため、梅雨に関連した季語が多数含まれます。

季語としての「五月晴れ」は、5月の晴れではなく、梅雨の合間の晴れた空のことです。

そのため、「五月晴れ」は6月の季語となるので注意しましょう。

7月(仲夏~晩夏)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
梅雨明 晩夏 梅雨明けし~今もわびしき~夢を見る|相生垣瓜人 送り梅雨・戻り梅雨・返り梅雨
雲の峰 夕立に~根を失ひし~雲の峰|右城暮石 入道雲・積乱雲・峰雲・雷雲
夏山 夏山や~ふもとに低き~雲の村|正岡子規 夏の山・夏嶺・青嶺・雪渓・登山
青田 晩夏 山の旅~ときに青田も~ちらほらと|鈴木真砂女 青田風・青田波
夕焼 晩夏 夕焼の~天の隅々~うらがなし|山口誓子 大夕焼・夕焼雲・梅雨夕焼・夕凪・西日
土用 晩夏 真昼日に~松風少し~土用かな|尾崎迷堂 土用入・土用明・土用鰻・土用波・土用干
暑中見舞 晩夏 暑中見舞の~返事怠り~遊びけり|楠目橙黄子 夏見舞・土用見舞
晩夏 今しがた~此世に出し~蝉の鳴|小林一茶 初蝉・蝉時雨・みんみん蝉・熊蝉・空蝉・蝉の殻・蝉の脱殻
金魚 恋さめて~金魚の色も~うつろへり|高浜虚子 出目金・和金・金魚屋・金魚鉢
茄子 晩夏 わが作る~茄子濃紫君近ければ|山口青邨

この他、7月は次のような季語があります。

分類 季語
行事 夏祓・鬼灯市
食べ物 サイダー・冷やし中華・氷菓・ラムネ・ビール
動物 雷鳥・船虫・かぶとむし・天道虫・海月
植物 睡蓮・胡瓜・茗荷の子・トマト

秋の季語|8月・9月・10月の季語一覧

暦上の秋は、8月・9月・10月です。

秋は作物が実り旬を迎える食べ物に関する季語がたくさんあります。

また、「七夕」や「十五夜」といった夜や夜空に関する言葉も秋の季語です。

春夏と同じく、秋ならいつでも使える季語は、季節列を「秋」としています。

それでは、使いやすい秋の季語を、各月ごとに見ていきましょう。

  1. 8月(晩夏~初秋)
  2. 9月(初秋~仲秋)
  3. 10月(仲秋~晩秋)

10月から順番に確認しましょう。

8月(晩夏~初秋)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
七夕 初秋 うれしさや~七夕竹の~中を行く|正岡子規 七夕祭・星祭・星迎・星合・星今宵・七夕竹・七夕飾り・笹飾り・七夕流し
天の川 ふしの根に~行あたりたる~天の川|正岡子規 銀河・銀漢・星月夜・秋の星・流れ星・流星・星飛ぶ
花火 晩夏 海の月~花火彩る~美しき|河東碧梧桐 揚花火・手花火・線香花火
立秋 初秋 立秋の~紺落ち付くや~伊予絣|夏目漱石 秋立つ・秋に入る・今朝の秋
初秋 遅く出て~海を鎮むる~盆の月|大野林火 盂蘭盆・魂祭・踊・盆踊・踊子・踊の輪・踊歌・門火・迎え火・送り火・大文字・灯籠流し・精霊流し
残暑 初秋 あをあをと~夕空澄みて~残暑かな|日野草城 残る暑さ・秋暑し・秋暑・処暑
新涼 初秋 新涼の~うす紫の~山の名は|星野立子 秋涼・秋涼し
秋の風 淋しさに~飯をくふ也~秋の風|小林一茶 秋風・秋の初風・色なき風・初嵐
初秋 こほろぎや~蜩いまだ~鳴きやまず|正岡子規 かなかな・秋の蝉・秋蝉・残る蝉・法師蝉・つくつくぼうし・つくつくし
西瓜 初秋 夏の果て~西瓜大きく~切られけり|鈴木真砂女 西瓜畑
朝顔 初秋 朝顔に~風も吹かずよ~草の中|石田波郷 牽牛花

この他、8月は次のような季語があります。

分類 季語
行事 原爆忌・終戦日・草市・解夏・地蔵盆・施餓鬼
食べ物 飴湯
動物 秋蛍・蟋蟀・鰯・太刀魚
植物 枝豆・月見豆・桃・白桃・芙蓉・芭蕉・鬼灯・鳳仙花

旧暦の7月7日は現在の8月にあたるため、8月の季語に「七夕」が含まれます。

さらに、盆や終戦日といった行事に関する季語も多いです。

俳句の中で「踊」と言うと、盆踊りを指します。

「踊」は秋の季語のため、他の季節で使いたいときは違う言葉を使うなど工夫しましょう。

9月(初秋~仲秋)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
台風 仲秋 台風と~同じ旅路と~なりしこと|稲畑汀子 台風圏・台風の目
十六夜 仲秋 名月も~十六夜も皆~雨にして|正岡子規 月・秋の月・初月・新月・夕月・宵月・月夜・十五夜・雨月・宵闇・立待月
かすかなる~水音もあり~虫の闇|山口青邨 虫時雨・虫すだく・虫の闇・螽斯・蟋蟀・鈴虫
夜長 仲秋 これからの~夜長さ思ふ~だに愉し|上田五千石 長き夜
野分 仲秋 この野分~夜半の潮ざゐ~近からむ|及川貞 野わけ・野分立つ・野分晴
冷やか 仲秋 冷やかな~雲に心を~遣る日かな|上田五千石 秋冷・冷ゆる
竹の春 仲秋 ほそき径~来てかいまみる~竹の春|山口青邨 竹伐る
花野 ひといきに~日の沈みたる~花野かな|鷲谷七菜子 花野原・花野道・夕花野
ちる芒~寒くなるのが~目にみゆる|小林一茶 尾花・花芒
葡萄 仲秋 葡萄の下~吾が身長の~まま歩く|山口誓子 巨峰・黒葡萄・マスカット

この他、9月は次のような季語があります。

分類 季語
行事 敬老の日
食べ物 月見団子・月見酒・芋煮会
動物 鯊・落鮎・初鮭・雁・松虫
植物 秋茄子・白粉花・とうもろこし・彼岸花・コスモス

だんだんと冷えてきた秋は、日が落ちてからの時間が長くなります。

そのため、十五夜の翌日である十六夜など、夜と月に関する季語が9月になるのです。

また、竹は他の植物と違い、親竹が成長して青々とする秋を「竹の春」と呼びます。

春が入りますが、秋の季語のため注意しましょう。

10月(仲秋~晩秋)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
稲刈 晩秋 世の中~稲刈る頃か~草の庵|松尾芭蕉 稲刈鎌・稲刈機・刈田・落穂・落穂拾ひ
秋深し 晩秋 秋深し~人に祈りの~深ければ|稲畑汀子 深秋・晩秋・暮秋・冬隣・秋の暮・秋の夕
夜寒 晩秋 まなぶたを~撫でて寝につく~夜寒かな|鷹羽狩行 宵寒・朝寒
秋晴 シヤガールの~絵に秋晴の~届きけり|稲畑汀子 秋日和・菊日和・秋高し・天高し・馬肥ゆる・秋の駒
冷まじ 晩秋 冷まじや~夕闇といふ~しめくくり|手塚美佐 朝霧・夕霧・夜霧・狭霧
山粧ふ 山粧ふ~人の創りし~古陶寂び|福田蓼汀 野山の錦・秋の山・秋嶺・秋の峰・山澄む
木の実 晩秋 ころがれる~木の実に何の~咎ありや|桂信子 木の実降る・木の実雨・団栗・橡の実・椎の実
紅葉 晩秋 岩畳を~ながるゝ水に~紅葉かな|原石鼎 黄葉・夕紅葉・紅葉山・草紅葉・蔦紅葉・照葉・初紅葉・紅葉且つ散る・黄落
木犀 仲秋 なほ匂ひ~立つ木犀の~雨の花|山口誓子 金木犀・銀木犀
新米 新米を~食うて養ふ~和魂かな|村上鬼城 今年米・新酒・新走・新蕎麦・新豆腐

この他、10月は次のような季語があります。

分類 季語
行事 重陽・体育(スポーツ)の日・運動会・ハロウィン
食べ物 栗飯・葛湯・猿酒・生姜湯
動物 猪・鹿・鵯・百舌・渡り鳥
植物 無花果・林檎・柿・干柿・茸・松茸

冬の季語|11月・12月・1月の季語一覧

暦の冬は、11月・12月・1月となります。

冬の季語は、秋が過ぎた中で忙しい年末年始を表す言葉です。

今回も、冬全体で利用できる季語は、季節列に「冬」と記載しています。

冬の季語も、次の順で見ていきましょう。

  1. 11月(晩秋~初冬)
  2. 12月(初冬~仲冬)
  3. 1月(新年・仲冬~晩冬)

それでは、11月の季語から確認しましょう。

11月(晩秋~初冬)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
七五三 初冬 七五三~あめつちの地を~歩ましむ|平畑静塔 七五三祝・髪置・袴着・千歳飴・帯解
行く秋 晩秋 行く秋の~なほ頼もしや~青蜜柑|松尾芭蕉 秋行く・秋過ぐ・冬支度
立冬 初冬 立冬の~水にしばらく~山うつる|桂信子 冬立つ・冬に入る・冬来る
時雨 初冬 此頃は~どこの時雨に~泣いて居る|正岡子規 村時雨・片時雨・小夜時雨・しぐるる
落葉 待人の~足音遠き~落葉哉|与謝蕪村 落葉掻・落葉焚・落葉籠・紅葉散る・散紅葉・木枯
小春 初冬 ふんだんに~小春日和を~賜はらむ|相生垣瓜人 小春日和・小春日・小六月
初雪 初冬 初雪や~みるみる母の~菜園に|中村汀女 小雪・初霜・霜
水鳥 日当りぬ~水鳥そこへ~浮み出でぬ|大橋櫻坡子 浮寝鳥・鴨・鶴・鴛鴦・白鳥
木枯 初冬 木枯に~月も動くや~波のかげ|正岡子規
山茶花 初冬 夕焼の~うすれ山茶花も~散りゆくか|渡邊水巴 姫椿・小椿

この他、11月は次のような季語があります。

分類 季語
行事 芭蕉忌・酉の市・亥の子・ボジョレーヌーヴォー
食べ物 柚子味噌・亥の子餅・柴漬
動物 綿虫・鷹・隼・鷲・雀・鶫
植物 枇杷の花・石蕗の花

初雪や初霜といった冬が始まる合図の言葉が、11月の季語です。

しかし、たまに訪れる春のような暖かな日のことを、「小春日」と言います。

春と付きますが、「小春」は初冬の季語のため間違えないようにしましょう。

12月(初冬~仲冬)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
クリスマス 仲冬 わらべらに~寝ねどき過ぎぬ~クリスマス|山口誓子 聖誕祭・聖夜・クリスマスイヴ・ポインセチア・聖歌・サンタクロース
年の暮 仲冬 腹の底に~何やらたのし~年の暮|村上鬼城 歳暮・歳末・年末・除夜
年惜しむ 仲冬 年惜しむ~心うれひに~変りけり|高浜虚子 行く年
年用意 仲冬 一袋~猫もごまめの~年用意|小林一茶 年設・春支度・煤払・松飾る
冬至 仲冬 冬至より~来たるもいまだ~雪の空|立花北枝 一陽来復・冬至南瓜・冬至粥・柚子湯・冬至風呂
霜夜 ほんのりと~茶の花くもる~霜夜哉|正岡子規 霜柱
冬日和 仲冬 よく続く~冬日和かな~母を訪ふ|星野立子 冬晴・冬麗
息白し さし寄せし~暗き鏡に~息白し|中村汀女 白息
寄鍋 寄鍋の~白菜雪の~ごとくなり|山口青邨 牡丹鍋・石狩鍋・おでん・闇汁・湯豆腐
初鰤 仲冬 初鰤に~この灘町の~人気かな|原石鼎 鰤起し・鰤網

この他、12月は次のような季語があります。

分類 季語
行事 年の市・羽子板市
食べ物 雑炊・熱燗・卵酒
動物 鱈・鮪・睦・楚蟹・兎・狐・狸
植物 冬至梅・甘蔗の花

12月は、本格的な寒さが始まり、年末に向けて忙しいことを表す言葉が多いです。

正月を迎えるための準備に関する言葉が、仲冬の主な季語となります。

上記の表以外にも、「忘年会」や「冬休み」も12月の季語です。

1月(新年・仲冬~晩冬)

季語 季節 例句 関連する・類似する季語
初詣 新年 日本が~ここに集る~初詣|山口誓子 初参・初社
初明り 新年 波音の~うつつに寄せて~初明り|稲畑汀子 初夜明・初空・初御空
初笑 新年 初笑~たしなめつゝも~祖母笑ふ|星野立子 笑初・初笑顔
寒月 晩冬 寒月や~一筋光る~田舍道|正岡子規 冬の月・月凍つる・月氷る
冴ゆ 冴ゆる灯に~新年夜情~雪のこゑ|飯田蛇笏 冴え・風冴ゆ・月冴ゆ・星冴ゆ・さえざえ・凍つ・悴む
晩冬 月影の~砕けては寄る~氷魚かな|松笙 厚氷・氷面鏡・氷柱・垂氷・氷点下・氷の声・凍る
晩冬 あすしらぬ~こともをかしや~雪つもる|飯田蛇笏 小雪・大雪・新雪・深雪・粉雪・綿雪・雪明り・雪曇
寒鯉 晩冬 寒鯉の~一擲したる~力かな|高濱虚子
寒桜 寒桜~林泉はづす~在り処かな|中村汀女 冬桜
福寿草 新年 地の果に~咲きほほけゐし~福寿草|稲畑汀子 元日草

この他、1月は次のような季語があります。

分類 季語
行事 破魔矢・鏡開・左義長
食べ物 雪見酒・煮凝・数の子・餅・雑煮
動物 寒鮒・凍蝶・寒雀・寒蜆
植物 葉牡丹・水仙・寒椿・若菜

横文字の季語もある!季語は時代と共に増えるもの

ここまで季語を見てきた中で、横文字の季語に気付いたでしょう。

時代と共に季語は増えていて、カタカナ言葉の季語もあるのが興味深いですよね。

たとえば、ハロウィンやクリスマスといった海外の風習も、季語と認められているのです。

実際に、カタカナの季語は次のようなものがあります。

季節 季語
ブランコ・ミモザ・アザレア・ネーブル・チューリップ・アスパラガス
ナイター・サンダル・クーラー・サングラス・アロハシャツ・サーファー・バーベキュー・ハンカチ
ダリア・コスモス
マスク・ラグビー・マント・ダイヤモンドダスト・スキー・スケート・ストーブ・シクラメン

日本語で表現できないものは、漢字やひらがなにこだわらず自由に発想しましょう。

まとめ

俳句の歴史と共に、季語は増加し続けています。

旧暦に合わせた季語もあるため、昔からある言葉を使うときは、季節が合っているか注意が必要です。

また、現在の気候は季語の季節とずれていることがあります。

そのため、初めは季節をチェックしながら季語を使うと、だんだんと季節に合った季語を覚えられるはずです。

様々な季語を知り、使いこなして、満足のいく俳句を作りましょう。