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自分の老後に備えて財産管理をする際に家族信託の利用を検討したいが、具体的な仕組みがよく分からないと思ったことはありませんか。
家族信託とは法的に効力のある財産管理方法になります。
仮に自分が認知症になっても、老後に財産管理の心配をする必要はなくなるのです。
この記事では、家族信託の仕組みを詳しく解説します。
家族信託とは?仕組みを解説
家族信託とは、委託者が元気なうちから、認知症になった際に備えて、財産の管理方法を決められる仕組みのことです。
「遺言書作成」や「後見制度」などと比較しても家族信託はかなり自由度が高いと言えます。
法的に効力をもった信頼できる財産管理方法なので、財産の相続方法に迷っている人は検討してみてください。
家族信託とは
家族信託普及協会によると家族信託とは、財産の所有権を「財産から利益を得る権利」と「財産を管理運用処分できる権利」の2つに分けて、後者の権利を家族に渡すことができることです。
たとえば、不動産のような財産を自分が管理できなくなったあとも、家族が財産管理などを存続させていくことができます。
家族信託の仕組み
家族信託普及協会によると家族信託は、「委託者」「受託者」「受益者」の三者間でおこなわれる契約です。
委託者 |
自身の財産の管理など運用処分も含むものを委託する人 |
受託者 |
信託された財産の管理などをおこなう人 |
受益者 |
財産によって得られた利益を受け取る人(委託者と同一人物に設定可能) |
三者はそれぞれ異なる役割を持っています。
たとえば、「委託者」である父が、「受託者」である息子に財産の管理権を託して運用を任せている状態だとします。
このとき、実質的な財産の管理をおこなうのは息子ですが、受益者を父親に設定していると、父親が利益を得ることになります。
実際に家族信託を利用する人のなかには、受益者を委託者自身に設定している場合もあるようです。
家族信託のメリット4選
家族に財産を管理する権利を託すことのできる家族信託のメリットは、主に以下の4つです。
- 委託者の判断能力低下に影響されない柔軟な財産管理ができる
- 遺言書のような資産承継効果を持っている
- 共有不動産の管理リスクなどを軽減できる
- 配偶者の認知症対策ができる
家族信託は、リスクに備えつつ、ある程度自由な財産管理をおこなうことができる点が強みであると言えます。
委託者の判断能力に影響されない柔軟な財産管理が可能
持ち主が認知症になってしまい、本人の判断能力が衰えた場合は、預金を引き出すことや、不動産を売却することができなくなる可能性があります。
家族信託であれば、財産の所有者が元気なうちから、判断能力が低下したのちの管理方法を指定することができます。
認知症などで委託者の判断能力が落ちてからもその判断能力に影響されない、財産管理などができる点は大きなメリットです。
遺言書のような資産承継効果を持っている
家族信託は遺言書のような効力も発揮します。
家族信託は委託者と受託者の契約であるため、遺言書を作成しなくても指定した親族に財産を継承することができます。
共有不動産の管理リスクなどを軽減できる
賃貸不動産を兄弟で所有していた場合、その不動産の管理をおこなうには、兄弟全員の承認が必要な場合があります。
たとえば、兄弟のうち1人が認知症になってしまった場合、兄弟全員の承認が得られません。そのため、新しい入居者との契約や建物の修繕がおこなえなくなってしまうこともあります。
家族信託を活用し、管理する権利を兄弟の1人に集中させておくと、残りの兄弟が認知症になっても不動産のスムーズな管理が可能です。また、家賃収入は兄弟全員で分けられる点もメリットと言えるでしょう。
配偶者の生活を助けることができる
配偶者が認知症になってしまっている場合は、判断能力がないため、配偶者を受託者にすることはできません。
しかし、家族信託を利用して、自分の死後に受益者を配偶者に変更する旨を定めておけば不動産収入などが配偶者へ渡るため、配偶者の生活を助けることができます。
家族信託の3つの注意点
家族信託にはメリットも多いですが、注意点も存在します。
- 家族間でもめ事が起きる可能性がある
- 信託した財産に相続税がかかってしまう
- 費用がかかる
上記のように、主に費用面での負担や、家族信託では得られない効果もあるので、契約の際は注意が必要です。
家族間でもめ事が起きる可能性がある
委託者に複数の子どもがいた場合、受託者がだれになるかでもめてしまったり、受託者が決まった後で不平がでたりする場合があります。
こういった家族間のトラブルを防ぐためにも、家族信託を利用する前には必ず家族会議をしておくようにしましょう。
信託した財産に相続税がかかってしまう
家族信託を利用することで直接的な節税効果はありません。家族信託によって相続された財産にはいずれ相続税がかかります。
受益者が亡くなった場合には、新たな受益者へ受益権が相続されて、相続税を支払う必要があるので注意しましょう。
費用がかかる
家族信託は、手続きに約50~100万円の費用がかかります。
主に必要な費用は以下のとおりです。
専門家への相談費用 |
30~80万円 |
公正証書作成費用 |
10~15万円 |
公正証書作成手数料 |
3~10万円 |
登録免許税 |
信託財産の1000分の4 |
公正証書作成費用は、専門家が公正証書を作成するために支払う費用で、公正証書作成手数料は公正証書作成の手数料として公証人役場へ支払う費用となっています。
上記はあくまで目安なので、家族信託を利用する場合は必ず複数の専門家に見積もりをしてもらいましょう。
家族信託の具体的な手続きのやり方
ここでは、家族信託の手続き方法を手順ごとに分けて解説します。
家族信託は、もしも自分の判断能力が落ちて財産管理ができなくなったときに備える場合や、早いうちから身内に財産を相続する流れを作っておきたい場合に有効な手段です。
具体的な手続き手順を踏む前に、まずは家族信託をおこなう目的を明確にしておきましょう。
目的があいまいなまま契約が進んでいくと、内容に不足が生じてしまい、それに後から気づくことになってしまうからです。
1.信託契約を結ぶ
委託者と受託者の間で財産の範囲や信託する目的、受益者をだれとするかなどの家族信託の内容を決定します。
具体的な記載方法や内容の取り決めに関しては、専門家に相談しておくと安心です。
また、信託契約書は公正役場で証書にしておくと、委託者の意思に基づく契約であることを証明できるため、契約書破棄の心配がなくなります。
2.信託用の口座を開設する
信託内容が決定したら、財産の管理や運用で得られた利益を入金するための専用口座を開設しましょう。
受託者は受託財産で得られたお金と自分のお金を分けておく義務があるので、口座取引がない銀行で家族信託専用の口座を作るのがおすすめです。
3.信託登記をする
信託登記は法務局で行います。
信託登記は法律的な知識が必要なため、個人で作成するのは非常に難しいです。
費用はかかりますが、司法書士のような専門家に相談して作成を依頼するようにしましょう。
まとめ
家族信託にもメリット・注意点があり、本当に自分に合っているのか、そもそも財産相続をするのが適切なのかどうかをしっかり見極めておく必要があります。
成年後見制度等の手段と照らし合わせて自分にはどの財産管理手段が合っているのかをしっかりと判断しましょう。