老後に向けて2000万円の資産形成が必要であるという報道などを受けて「老後の生活費が足りなくなったらどうしよう」と考えている人もいますよね。

そのような人は、退職金の運用を検討するとよいかもしれません。上手に運用を行えば、資産形成に役立つでしょう。

この記事では、退職金運用のポイントや方法などを紹介します。資産を増やす方法を知ることで、充実した老後生活を送れるようになるでしょう。

退職金の運用方法を決める具体的な手順

退職金の運用方法を決める具体的な手順

老後の生活に困らないようにするためには、ある程度は自分で資産を蓄えておく必要があります。

ここでは、老後の収入と支出をふまえて、自分に合った退職金の運用手法を検討する方法について紹介します。

老後の生活費ともらえる年金を知る

公益財団法人生命保険文化センターの資料によると、夫婦二人で老後を生活していくうえで最低限必要な資金は月に約22万円ゆとりある生活を送るなら約36万円が必要とされています。

一方で年金の給付金額については、受給開始年齢や家族構成、共働きかどうかで異なります。また、厚生年金は在職中の給与水準によって大きく金額が変わる可能性がある点も理解しておくことが重要です。

世帯別の年金給付額

世帯 年金給付額(月額)
会社員+専業主婦 202,211円
共働き 292,324円
独身(会社員) 146,162円

(※会社員は厚生年金と国民年金を受給し、専業主婦は国民年金のみ受給する場合で計算。)

(※こちらの金額は平均額であり、厚生年金は給与水準によって金額が異なります。)

出典:厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

会社員と専業主婦の家庭は、最低限の生活資金を年金だけでは賄えません。そのため、自分で蓄えを用意する必要があります。

共働きの夫婦なら、最低限必要な金額は確保可能です。しかし、ゆとりある生活を送るのは難しいと言えます。

老後の生活収支と「資産寿命」を把握

先に紹介した平均値を参考にしつつ、自分の老後の生活収支と、自分の資産が何歳で枯渇するかを示す「資産寿命」を試算してみましょう。

一例として、次の前提で試算してみます。

年金受給額 20万円
月の生活費 30万円
65歳(退職)時点の資産額 2000万円

資産が枯渇する年齢(カッコ内は65歳からの年数)

運用しない場合 82歳(17年)
年率4%で運用する場合 93歳(28年)

年金以外の収入がない場合、月10万円ずつ資金が減ってしまいます。年間にして120万円減り、65歳時点で2000万円あった資産は約17年後の82歳で尽きてしまう計算です。

しかし、年率4%で運用した場合は、93歳まで資産が維持されます。このように、自分がどの程度運用から収入を得ればよいか考えたうえで、運用方法を検討することは重要です。

また、現代では60歳で定年を迎える企業も見られますが、その場合は年金の受給額も変わります。そのため、自分の状況を反映して試算をおこないましょう。

退職金の運用方法5選を紹介

おすすめの退職金運用の方法5選

退職金の運用手法はさまざまな種類がありますが、ここでは、具体的に5つの退職金運用手法を紹介します。具体的には以下のとおりです。

  • 退職金定期預金プラン
  • 個人向け国債
  • 保険
  • 投資信託
  • 株式

どのくらい運用で資産を増やしていきたいか、どの程度安全に運用していきたいかを考えながら、適切な運用手法を選択していきましょう。

退職金定期預金プラン

退職金定期預金プランは、退職者限定で通常より高い金利の受け取りが期待できるプランです。

銀行自体が破綻しない限りは、金利が受け取れなくなる可能性は低いでしょう。また、銀行ごとにさまざまなプランが用意されているため、退職金定期預金プランを申込む際には、比較検討をおこなうのがおすすめです。

個人向け国債

個人向け国債は日本国が個人投資家向けに発行している国債です。借り手が国であるため、日本国が財政破綻を起こさない限りは安心して運用できるでしょう。

また、保有期間中は利息を得ることができます。今は低金利の時代ですが、個人向け国債は最低金利が0.05%と定められています。そのため、預金するよりは高い金利を得ることが可能です。

保険

死亡時や事故、病気への備えとして加入するケースの多い保険ですが、備えと資産運用の双方を担っている保険商品も多いです。

退職金で保険に加入すると、もしものときに一時金がもらえる保険や、一定の年齢から年金の形式で受け取れる保険もあります。

貯金があまりできない人は、保険を使って資産を蓄えるのも有効な手段と言えるでしょう。

投資信託

投資信託は、運用のプロフェッショナルがあらかじめ定められたルールに基づいて投資家から集めた資金を運用し、利益を還元する商品です。

投資信託が運用する金融商品には、多数の銘柄があり、目標とするリターンや許容できるリスクによって、運用する商品が変わります。そのため、自分に合った運用をおこなう商品を選ぶことが大切です。

また、NISAを活用して投資信託を運用すると、本来収益にかかる税金20.315%が5年間にわたり免除される点は理解しておくとよいでしょう。

株式

株式は特定の企業が発行する株式に投資して、その企業の利益から配分される配当や、株価の値上がり益を受け取る運用方法です。

多くの収益が得られる可能性がある反面、損失リスクも高いため、運用に失敗した場合のダメージに注意が必要です。

なお、こちらもNISAが適用される商品なので、株式投資を検討している人は、NISAを活用することで運用効率を高められるかもしれません。

退職金の運用で失敗しないための注意点

退職金の運用で失敗しないための注意点

資産運用には必ずリスクがあります。退職金の運用に失敗して資産を減らすことのないよう、以下の4つを参考にしてください。

  1. 退職金が手に入る前から運用にチャレンジしておく
  2. ハイリスク商品での運用は控えめに
  3. 投資先を分散して運用する
  4. 金融機関の話を鵜呑みにしない

それぞれの注意点について、詳しく紹介していきます。

退職金が手に入る前から運用にチャレンジしておく

退職金が手に入ってからいきなり資産運用に着手するのは危険と言えます。資産運用のコツがよく分からないまま、いきなり多額の運用を始めると失敗に繋がる可能性が高いからです。

現役世代の早いうちから少しずつ投資に回すことで、資産運用に慣れることができます。くわえて、長期間運用することで資産が増えることにも期待が持てます。

ハイリスク商品での運用は控えめに

退職金は老後の大切な生活資金です。ハイリスクな運用により資産を減らす可能性もあるので、知識の少ない人は無理に運用しないほうがいいでしょう。

資産をそこまで増やす必要がない人は、株式やハイリスクな投資信託などは手を出さないのがよいかもしれません。

投資先を分散して運用する

投資は1つの商品に資産を集中させるのではなく、分散させるのがおすすめです。分散には下記の3つがあります。

  • 異なる資産を組み合わせる「資産の分散」
  • 複数の地域を組み合わせる「地域の分散」
  • 定期的に同じ金額で積み立てる「時間の分散」

これらを実践すれば、特定資産の価格下落のダメージを抑制したり、投資タイミングが悪くて失敗したりするリスクを減らせるでしょう。

まとめ

「老後に備えて2000万円の資産を形成しておく必要がある」という報道があるように、年金だけで老後の生活を維持するのは難しいです。老後に備えて早めに貯蓄などをおこなうようにしましょう。

また、充実かつ安定した生活を送るためには、退職金を運用するのも一案でしょう。過度にリスクを取りすぎずに、投資先を分散しながら、安全性の高い運用を目指してみてください。