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定年退職したあとのセカンドライフを想像すると、楽しみな一方で老後資金について不安を抱える人も多くいるでしょう。さらに、老後に退職金を使う計画がある人は、退職金の金額も気になるところです。
定年退職金の平均額を調べるポイントは、学歴、企業規模、業種の3つです。この記事では、さまざまな条件から見る退職金の平均額について解説しています。
退職金の平均額を知り、きちんと資金計画を立てて素敵なシニアライフを迎えましょう。
退職金の仕組み
退職金制度とは、従業員が勤めていた企業から退職時に退職金を受け取る制度のことです。
自分と同年代の定年退職金の平均額が気になりますが、退職金制度は、法律で定められたものではありません。企業によって退職金制度の有無や、給付の仕方が異なります。
退職金制度を取り入れている企業の割合を見ていきましょう。
退職金制度を取り入れている企業の割合
厚生労働省の「退職給付(一時金・年金)制度の有無、形態別企業数割合」調査によると、退職金制度を取り入れている企業の割合は83.9%でした。
従業員数1000人以上が95.2%、300~999人が92.2%、100~299人が88.0%、30~99人が81.7%と、企業規模が大きい会社は退職金制度を導入している割合が高いことが分かります。
退職金にも税金がかかる
退職金を受け取る際には住民税と所得税がかかります。
一般的に定年退職金とは、老後の所得保障として長期間働いた人へ、より多くの報酬が支払われる仕組みです。そのため、退職所得控除を設けたり、他の所得と分離して課税されたりと、定年退職金の税負担が軽くなるよう配慮されています。
所得税法第203条1項各号に定められている「退職所得申告書」を勤務先に提出しておけば、原則として個人で確定申告をする必要はありません。
定年退職した場合の退職金の平均額
定年退職金の平均額をチェックする際は、学歴、企業規模、業種の3つの項目に分けて調べることができます。それぞれの平均額について詳しく内容を確認していきましょう。
学歴別の退職金平均額
学歴別で定年退職金平均額をまとめたものが以下の表です。
区分は、大学・大学院卒、高校卒、高校卒(現業職)に分かれています。
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) |
高校卒(管理・事務・技術職) |
高校卒(現業職) |
|
定年退職金平均額 |
1983万円 |
1618万円 |
1159万円 |
大学・大学院卒(管理・事務・技術職)と高校卒(管理・事務・技術職)の退職金額を比べると、約400万円の差があります。このことから、定年退職金の給付額は、学歴によって変動することが分かります。
企業規模別の退職金平均額
企業規模別の定年退職金平均額をまとめました。
企業規模 |
30〜99人 |
100〜299人 |
300〜999人 |
1000人以上 |
定年退職金平均額 |
1407万円 |
1605万円 |
1825万円 |
2233万円 |
出典:公益財団法人生活保険文化センター 生活基盤の安定を図る生活設計
従業員数1000人以上の大企業では、定年退職金の平均は約2200万円です。これに対して、従業員数が1000人未満の企業では、定年退職金平均額は2000万円を下回っています。企業規模が大きくなるにつれ、支給額が増える点は理解しておきましょう。
業種別の退職金平均額
大企業の業種別に、退職金の平均額が高い順に5つ挙げて表にまとめました。
平均退職金額 |
|
新聞・放送 |
3959万円 |
製造業(車輌・自動車) |
2938万円 |
鉱業 |
2877万円 |
製造業(電機機器) |
2532万円 |
製造業(化学) |
2445万円 |
このデータは、大卒・大学院卒の男性が定年退職をした場合の退職金平均額をまとめたものです。
新聞・放送の退職金平均額は約4000万円で、製造業(化学)の約2倍となり、業種によって平均額に開きがあることが分かります。
次に中小企業の業種別で、退職金の平均額が高い順に5つ挙げました。
こちらのデータは、従業員数10〜299人の中小企業で大学卒、定年退職をした場合の退職金平均額をまとめたものです。
平均退職金額 |
|
金融業・保険業 |
1726万円 |
不動産業・物品賃貸業 |
1354万円 |
建設業 |
1314万円 |
情報通信業 |
1155万円 |
製造業 |
1149万円 |
出典:東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)
中小企業のなかで、退職金平均額が一番高いのは金融業・保険業の1726万円です。大企業の退職金平均額よりも業種間の差が少ないことがわかります。
そして、公務員の退職金平均額は以下のとおりです。
役所で事務的な仕事を行う一般職員、国・公立学校の教員・学長などの教育公務員、警察職に分けて表にまとめました。
こちらのデータは、25年勤続後の定年退職者の退職金平均額です。
平均退職金額 |
|
一般職員 |
2182万円 |
教育公務員 |
2268万円 |
警察職 |
2225万円 |
国家公務員の退職金手当は法律で定められており、地方公務員も各地方の条例で定められています。上記の表から、公務員の退職金平均額は、どの職種でも約2200万円前後であることが分かります。
定年後の資金に困らないための対策方法について解説
大企業や中小企業の定年退職金の平均額を知り、快適なシニアライフを過ごすために、定年退職前から老後資金の準備を始めましょう。
次に、退職金の具体的な運用方法をご紹介します。
退職金の受け取り方
退職金は企業の定める範囲内で一括受け取りと分割受け取りができます。受け取り方で税金の計算方法が異なり、社会保険料の支払額にも影響します。
退職金の主な受け取り方法はこちらです。
- 退職一時金制度:退職時に一括で支給される。退職所得控除が適用され、課税対象となる金額が低くなり、手取り額が多くなる。
- 企業年金制度:退職する際の退職金を分割して受け取る方法。確定給付企業年金、企業型確定拠出年金、厚生年金基金の主な3つを利用する企業が多い。
分割受け取りの場合、公的に年金控除はありますが、退職所得控除が適用されません。また、退職金を分割で受け取り、年間の合計所得が増えると、税金や社会保険料が増えてしまいます。
しかし、年金の受給期間中には、一定の利回りが付与されるのが一般的です。そのため、単に税控除の有無で退職一時金制度が得とは言えない点は理解しておく必要があります。
退職金の受け取り方法は控除額や利回りを計算したうえで決めるようにしましょう。
資産運用を行う
ボーナスや退職金を利用して資産運用をおこなうことも、資金対策として有効です。
資産運用の方法は以下のとおりです。
- NISA(少額投資非課税制度)を利用する
- iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する
NISA(少額投資非課税制度)とは、投資した金融商品を売却した際に、利益や配当に対する税金がかからなくなる制度のことです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、毎月掛金を積み立てて、金融商品を自身で運用する仕組みを指します。iDeCoの運用商品には、定期預金や保険、投資信託があり、運用の結果次第で老後に受け取る金額が変わります。
退職金や公的年金だけではなく、自分で金融商品を運用できる制度を利用して、老後の収入を増やしていきましょう。
生活を見直す
貯金をすることは大切です。しかし、いま一度生活の見直しをおこなうことで出費を抑えることも重要となります。
詳しくは以下の項目をチェックしてみてください。
- 携帯やインターネットなどの通信費の見直し
- 保険の見直し
- 車関連の出費の見直し
格安SIMへの切り替え、生活に合わせた保険の内容へ変更する、手持ちの車を手放してカーシェアで固定費を抑える、などの対策があります。
無理なく続けられる節約方法を試してみてください。
まとめ
定年退職したあと、新しい趣味を始めようとしている人も多いでしょう。そこで気になるのが、自分が受け取れる退職金の金額ですよね。
退職金は、学歴・企業規模・業種から事前に受け取れる金額の想定ができることがあります。
退職金の利用計画を立て、老後資金に余裕を持った素敵なシニアライフを迎えましょう。