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「高齢者運転の事故原因が気になる」
「免許返納はどうしたら良いのかわからない」
この記事は、高齢運転者による事故原因や運転免許を自主返納することについてまとめたものです。
車のない生活をイメージすることで、自主返納という選択肢をより現実的に捉えられるでしょう。
高齢者と高齢運転者?年齢の認識に違いあり!
まず話を進めていく前に、一般的な高齢者と高齢運転者の捉え方の違いから見ていきましょう。
一般的な高齢者とは、厚生労働省によると日本では65歳以上と定義されています。
ですが、高齢運転者の場合、65歳以上という認識で話を進めると少し違うようです。
例えば、運転免許の更新時に実施する高齢者講習や、車に提示する高齢者マークの条件は、70歳以上とされています。
また、75歳以上になると運転免許の更新時に高齢者講習と合わせて、認知機能検査を受けなければいけません。このような状況から見て、高齢者の定義である65歳以上を高齢運転者とすると、若干の違和感がありますよね。
そのため、本記事では運転免許の更新や交通ルールなどに基づき70歳以上が高齢運転者として話を進めていきます。
車の運転を辞める高齢者が年々増えている!
最初にご覧いただきたいのが、警察庁が発表した運転免許を自主返納している高齢者(75歳以上)のデータです。
自主返納件数が年々増加していることがわかります。
年度 | 自主返納件数 |
---|---|
2019年 | 350,428件 |
2018年 | 292,089件 |
2017年 | 253,937件 |
2016年 | 162,341件 |
2015年 | 123,913件 |
さて、自主返納を決めた理由にはどんな理由があるのでしょうか?
2017年に実施された警察庁のアンケートによると、以下の理由が挙げられています。
- 家族に返納を勧められた(33.0%)
- 運転する必要がなくなった(29.4%)
- 運転に自信がなくなった(19.2%)
ご覧のとおり、自主返納のきっかけは家族に勧められたという人が多いことがわかりますね。
一方、警察庁のアンケートには自主返納をしたくない理由として、約7割の人が車がないと生活が不便になると回答しました。
高齢運転者の中には、生活する上で車が必要不可欠だと感じている人もいます。
運転操作ミスが1位!高齢者の運転による事故原因
免許返納の理由の多くは、本人や家族が運転に対してリスクを感じていたからでした。
ここでは、高齢者の運転による死亡事故のデータから運転するリスクを見ていきましょう。
2019年の警察庁のデータによると、高齢運転者(75歳以上)による人的要因の死亡事故は年間で358件ありました。
その内、原因が明確となっているものは303件。
そして、理由は以下のとおりとなっています。
- 操作不適(30%)
- 安全不確認(19%)
- 漫然運転(19%)
- 脇見運転など(10%)
- 判断の誤り(7%)
操作不適はいわゆる操作ミスのことです。
例えば、ハンドルの操作ミスや、アクセルとブレーキの踏み間違いなども操作不適に該当します。
また、漫然運転とは集中力や注意力が低下した状態で運転することです。
ぼーっとしていたり、考えごとをしていたりの状態で運転していることを指します。
理由となっている操作不適の中のアクセルとブレーキの踏み間違いは、最近よくニュースでも見かけますよね。
警察庁のデータでは、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故は全体の7.8%との結果もわかっています。
13倍も違う!高齢運転者による踏み間違いは圧倒的に多い
ニュースでも取り上げられることが多いので、おおよその予想はつくと思いますが、高齢者による踏み間違いは確かに多いです。
75歳以上の高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いは、先ほどもお伝えしたとおり、全体の7.8%。
一方、警察庁のデータによると、75歳未満の運転者は全体の死亡事故件数の内、0.6%です。
割合でみると、13倍もの差があることがわかります。
圧倒的な差がありますよね。
ちなみに、操作不適による死亡事故についても比較してみましょう。
- 75歳以上の高齢運転者:30%
- 75歳未満の運転者:12%
運転操作ミスという視点から見ても3倍近くの差があるのです。
データから読み取れるように、高齢者が起こす死亡事故の内、運転操作ミスによる事故が多いことがわかります。
ベテラン運転手でも運転機能は衰える!運転操作ミスはもっと身近なもの
運転に限らず、人は加齢と共に色々な機能が低下します。
例えば、視力が落ちてきたり、反射神経などの運動能力が落ちてきたりしますよね。それは結果的に運転能力の低下に繋がっていきます。
視力が落ちると、これまで運転時に確認できていた人や障害物の認知が遅れるかもしれません。運動能力が落ちると、人や車が急に飛び出してきたときに咄嗟に正しい操作ができないかもしれませんよね。
たとえ何十年と車を運転してきた人であっても、こういった機能は徐々に衰えていくものなのです。
「今まで一度も事故を起こしたことがないから」
このように他人事のように考えずに、高齢運転者の年齢になったら「自分にもあり得ること」と意識することが大切です。
まずは、70歳になったら高齢運転者であるという自覚を持つことから始めましょう。
安全運転を続けるために!高齢者になったら対策を考えよう
では、自分でできる安全運転への対策をご紹介します。
- 高齢者マークをつけよう
- サポカーに乗り換えよう
- 年に1回やろう運転チェックリスト
詳しく見ていきましょう。
その1.高齢者マークをつけよう
まず、高齢者マークをつけることも対策のひとつです。
一般的に高齢者マークという呼び方で馴染みがありますが、警察庁によると正式名称は高齢運転者標識といいます。
高齢運転者標識は、以下に該当する運転者に対して表示を促すものです。
- 70歳以上の運転者
- 加齢による身体能力の低下が運転に影響を及ぼす人
表示を促すものと伝えたとおり、表示は義務ではありません。
しかし、以下のような表示をつけておきたい理由があります。
- 危険防止のためやむを得ない場合を除き、表示している自動車に対して幅寄せや割り込みをした自動車運転者は処罰される
- 周囲の自動車運転者は表示している自動車が安全に通行できるように配慮しなくてはいけない
要するに、高齢運転者標識をつけることで、周りがあなたのことを高齢運転者と意識してくれるようになります。
その2.サポカーに乗り換えよう
サポカーとはセーフティ・サポートカーの略称です。
経済産業省によると、政府は高齢運転者の交通事故防止対策の一環として普及開発が取り組まれています。サポカーは、交通事故が発生しそうな状況で被害を抑えるために以下のような機能が備えられているのが特徴です。
- 衝突被害軽減ブレーキ
- ペダル踏み間違い急発進抑制装置
- 車線逸脱警報装置
- 先進ライト
サポカーという名前のとおり、機能はあくまでサポートとなります。
その3.年に1回やろう運転チェックリスト
運転チェックリストは、記事の最初に画像で紹介したものです。
警視庁のサイトでは年に1回チェックしてみよう、と案内しています。
自分自身の運転機能の衰えは普段はなかなか自覚しづらいこともあるのでチェックリストで客観的に確認することが大切です。
例えば、毎年誕生日にやるなどと決めて実践するのも良いでしょう。
高齢者の運転に対してどんな対策がされてるの?
一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会によると、以下の2つの対策が行われています。
- 70歳以上の免許保有者が更新する場合:高齢者講習
- 75歳以上の免許保有者が更新する場合:認知機能検査+高齢者講習
75歳以上の人が免許を更新する際に受ける認知機能検査は、記憶力や判断力を検査します。
記憶力や判断力が低下していると判断されると、追加で臨時適性検査を受けたり、主治医などからの診断書を提出したりすることが必要です。
そして、最終的に認知症と診断された場合には運転免許の停止や取消という処分になってしまいます。
運転免許の停止または取消と自主返納は何が違うの?
どちらも車に乗れなくなるという事実は一緒なので、違いがないように見えても不思議ではありません。
しかし、運転免許の停止や取消と自主返納では大きな違いがあります。
それは、運転免許の停止や取消の場合には運転経歴証明書を発行してもらえなくなることです。
運転経歴証明書は、運転免許証に代わる身分証明書としての役割や、お得なサービスを受ける際に必要となります。
いずれ車のない生活になるのなら、自主返納をして運転経歴証明書をもらった方が便利です。
そのため、運転を続けるのが危険だと感じた場合には、自身や家族がしっかり判断して自主返納することが大切になります。
考えよう!高齢者の運転免許証自主返納のタイミング
自主返納の方が、今後の車のない生活において少し便利というお話をしましたよね。
また、気持ちの面でも運転免許の停止や取消という処分をされるよりは、自主返納をした方がダメージが少ないのではないでしょうか?
- 運転に不安を感じ始めた
- 家族から自主返納を勧められた
- 運転チェックリストで当てはまるものが多かった
上記に当てはまる人は、自主返納を考えるタイミングかもしれません。
高齢運転者の家族も普段から気にかけてあげて、不安を感じたら話し合いを持つことが望ましいでしょう。
しかし、自主返納の話は前向きな話ではないため、家族からは言い出しにくいと感じている人も多いですよね。
環境を整えながらゆっくりと自主返納の選択へ
ベストな状態は、高齢運転者本人が納得して自主返納を選んでくれることです。
自主返納という結果も大切ですが、本人が嫌々返納してその後の生活を暗い気持ちで過ごしていたら…家族も良い気持ちにはなりませんよね。
本人が少しずつ状況を受け入れながら、自然と自主返納を選べるようにするのが良いでしょう。
- 夜間の運転は控える
- 運転で遠出はせずに近場のみにする
- 運転するときは家族が同乗する
急に「運転やめて!」ではなくて、少しずつ運転の範囲を狭めていくイメージです。
これは家族からのお願いに限らず、高齢運転者本人が自ら意識していくのでも良いでしょう。
高齢者が車のない生活をできる限り快適に過ごすために
ここでは、高齢者にとって車が運転できなくなると不便なポイントを解消するコツを見ていきます。
- 買い物は宅配を利用する
- シルバーパス(シニアパス)を利用する
- 運転免許自主返納後に受けられる特典を利用する
「車のない生活ができそう!」と感じるコツを見つけてみてくださいね。
その1.買い物は宅配を利用する
近年、ネットスーパーなども増えてきて、宅配で気軽に買い物ができるようになりました。
ここでは、食材や日用品など、普段の買い物でよく購入するものを宅配で買えるサービスをご紹介します。中には、シルバー特典などとして一般の利用者よりも少しお得に利用できるサービスもあるので、チェックしてみてくださいね。
業者 | 主な取扱商品 | 宅配地域 | お届け頻度 | 注文方法 |
---|---|---|---|---|
ヨシケイ | 食材 | 全国 | 毎日(休業日除く) | 直接・ネット |
パルシステム | 食料品・日用品 | 東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、福島、山梨、長野、静岡、新潟 | 週に1回 | ネット・アプリ・注文用紙 |
ナッシュ | 食事・スイーツ | 全国 | 1週間~3週間に1回 | ネット |
イオン | 食料品・日用品・衣料品 | サイトから郵便番号で検索の必要あり | 注文後、最短当日 | ネット |
イトーヨーカドー | 食料品・日用品・衣料品 | サイトから郵便番号で検索の必要あり | 注文後、最短当日 | ネット |
取扱商品やお届け頻度が違うので、自分の環境に最適なサービスを選ぶと良いでしょう。
特徴は以下のとおりです。
業者 | 特徴 |
---|---|
ヨシケイ |
|
パルシステム |
|
ナッシュ |
|
イオン |
|
イトーヨーカドー |
|
その2.シルバーパス(シニアパス)を利用する
シルバーパス(またはシニアパス)とは、高齢者が電車やバスを無料もしくはお得に利用できる定期券のことを指します。
ここでは、シルバーパスのイメージを持ってもらうために、いくつかの例を紹介しますね。
東京都シルバーパス | 発行元 | 一般社団法人東京バス協会 |
---|---|---|
購入条件 | 東京都内に住民登録をしている70歳以上の人 | |
利用範囲 | 東京都内の大部分の乗合バス、都営地下鉄と都電のほか日暮里・舎人ライナー ※詳しくはサイトをご覧ください |
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利用期間 | 発行日から9月30日まで | |
料金 | 20,510円 (非課税または合計所得金額が125万円以下の人は1,000円) |
|
横浜市シニアパス | 発行元 | 横浜市交通局 |
購入条件 | 年齢が65歳以上の人 | |
利用範囲 | 市営バス全線、横浜交通開発バス(61.70.117系統) ※市営地下鉄、観光スポット周遊バス「あかいくつ」及び他社のバスは利用不可 |
|
利用期間 | 3か月券、6か月券の販売 | |
料金 | 3か月券(19,720円)、6か月券(37,370円) | |
大阪市敬老優待乗車証(敬老パス) | 発行元 | 大阪市 |
購入条件 | 大阪市に住所のある70歳以上の人 | |
利用範囲 | Osaka Metro(オオサカメトロ)が運行する地下鉄・ニュートラム、大阪シティバスが運行するバス (IKEA鶴浜/ユニバーサル・スタジオ・ジャパンTM行バスと空港リムジンバスは利用不可) |
|
利用期間 | 5年間 | |
料金 | 発行料金はかからず、1回50円で乗車できる |
その3.運転免許自主返納後に受けられる特典を利用する
最後におすすめするコツは、運転免許を自主返納した後に受けられる特典を利用することです。
特典を受ける際には、自主返納後に発行できる運転経歴証明書が必要となります。
都道府県ごとの詳しい特典内容は、一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会の高齢運転者支援サイトを確認してください。
特典の一例をご紹介します。
- タクシー・バスの運賃割引
- 商品券の贈呈
- 百貨店の宅配料金割引
- 美術館・飲食店の料金割引 など
車がなくても移動が楽になるような特典から、経済的な負担の軽減になる特典までありますよね。
ご紹介したコツを上手に取り入れることで、車がなくても不便さをカバーできる部分が増えていくでしょう。
知っておこう!高齢者が運転免許を自主返納する手続き
まず、運転免許を自主返納する条件は以下のとおりです。
- 運転免許証の有効期限内であること
- 運転免許証の停止・取消しの行政処分中ではない人
- 運転免許証の停止・取消し処分の基準などに該当していない人
これらの条件に当てはまり、運転免許を返納したい場合に自主返納ができます。
手続きは現住所のある都道府県で行いましょう。
具体的な申請場所や申請書類などは各都道府県で違いがあるため、各都道府県警察の運転免許センターなどに問い合わせる必要があります。
警察庁のサイトで問い合わせ先を確認してください。
本記事では例として、警視庁で案内されている東京都の申請方法を見ていきましょう。
東京都で免許証を自主返納する場合
警視庁によると東京都の場合、運転免許試験場、運転免許センター、警察署で自主返納の手続きができます。
手数料は無料で、必要なものは運転免許証のみです。また、代理申請の場合には、返納者本人の運転免許証と委任状が必要となります。
申請場所ごとの受付時間は以下の表を参考にしてください。
申請場所 | 受付期間 |
---|---|
府中運転免許試験場 | 平日:8:30~17:15 日曜:8:30~12:00、13:00~17:15 ※土曜、祝休日、年末年始(12月29日~1月3日)は受け付けていません |
鮫洲運転免許試験場 | |
江東運転免許試験場 | |
神田運転免許更新センター | 平日:8:30~17:15 ※土曜、日曜、祝休日、年末年始(12月29日~1月3日)は受け付けていません |
新宿運転免許更新センター | |
警察署 |
自主返納をすると、運転経歴証明書を発行できるようになります。
記事内でも触れましたが、運転経歴証明書があれば、身分証明書として代用できるほか、様々な特典を受けることが可能です。
自主返納の手続きと一緒に申請できるので、合わせて発行すると良いでしょう。
運転経歴証明書を発行して車のない生活をより快適に!
運転経歴証明書を発行するには以下の条件が必要です。
- 運転免許を自主返納した人
- 運転免許の更新を受けずに失効した人
運転免許取消や停止の処分を受けた人は発行できません。
そのため、運転経歴証明書を発行してもらうには、自主的に運転免許を返納もしくは失効する必要があります。
また、自主返納もしくは失効してから5年以内であれば発行してもらえるので、周囲で未発行の人がいたら、発行をおすすめするといいかもしれません。
警察庁の案内によると、運転経歴証明書は2012年4月以降に交付されたものに関しては、本人確認書類として使用可能です。
これまでにもお伝えしたとおり、運転経歴証明書を持っていることで様々な特典を受けられるので、発行をおすすめします。
運転経歴証明書を発行するには
警視庁が案内している東京都での運転経歴証明書の発行について説明します。
自主返納と合わせて発行する場合と、運転経歴証明書発行のみの場合では必要なものが違うので、確認してください。
手数料は1,100円です。
自主返納と一緒に発行 |
※後日、運転経歴証明書を郵送で受け取りたい場合には、レターパックライト(青色)を用意する |
---|---|
運転経歴証明書発行 |
|
自主返納と一緒に発行する場合には、同じ申請場所でそのまま手続きを進めることができます。
運転経歴証明書のみ発行の場合には、申請場所が下記のとおりです。
- 運転免許試験会場
- 島部警察署(大島署・新島署・三宅島署・八丈島署・小笠原署)
自主返納の申請とは場所が少し違うので、確認して間違わないようにしましょう。
申請場所が運転免許試験場の場合、運転経歴証明書は即日発行できます。
ですが、時間が掛かるため時間にゆとりを持って行きましょう。
運転免許センター、警察署の場合には、発効までに2週間~4週間程度の日数がかかります。
記事内でもお話ししたように、運転経歴証明書は持っておくと便利なので、忘れずに発行してくださいね。
まとめ
車は何歳まで運転していいのか、というのは決められているものではありません。
運転免許を自主返納したり、停止や取消処分を受けたりしない限りはいつまでも運転できるのが現状です。
そのため、個人でしっかりと高齢者の運転リスクへの理解を深める必要があります。
そして、安全運転を守るためには、必要に応じて運転を辞めたり、運転免許の自主返納を決断しなければなりません。
記事を参考に、高齢者になったらいずれ運転免許の自主返納という選択があり得るということを考えておきましょう。