ご自身の長年にわたる不妊治療経験から「1人でも多くの女性に、望むタイミングで妊娠・出産・キャリアが実現できる社会にしたい」との想いを実現するために起業し、mederi株式会社を創業した坂梨亜里咲さん。一方、元ミス・インターナショナル日本代表で、現在は医学博士としてさまざまな研究を行っている櫻井麻美さん。今回は小さなお子さんの育児をしながら社会で活躍するお二人に、仕事や子育てなどについてお話しいただきました。
坂梨 亜里咲さん
1990年宮崎県出身。明治大学卒業後、ECコンサルティング会社にてマーケティングおよびECオペレーションを担当。2014年より女性向けWebメディアのディレクター、COOを経て、同社代表取締役に就任。2019年、mederi株式会社を創業。代表取締役を務める。
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櫻井 麻美さん
2006年度ミス・インターナショナル日本大会優勝、同世界大会4位。美と健康を追求する中で骨盤調整に出会い、指導者となる。2016年、順天堂大学大学院医学研究科に入学し、2022年3月、タキシフォリンの研究で医学博士号を取得。ビューティ&ウェルネス専門職大学講師、順天堂大学医学部非常勤助教。国際タキシフォリン学会理事。
仕事に育児にお忙しいお二人ですが、ご経歴を教えていただけますか?
坂梨: 私は、新卒2年目からスタートアップ企業に身を置き、女性向けWebメディアの運営に携わってきました。その後、29歳で子会社の社長を務めることになり、ちょうどその頃、「これからの30代をどう生きるのか」を真剣に考えるようになったのです。長年にわたる不妊治療の経験を通じて強く感じたのは、「女性が望むタイミングで、妊娠・出産・キャリアのすべてを諦めずに選べる社会は、まだ実現されていない」という現実でした。この課題を、自分自身の人生として終わらせるのではなく、社会の仕組みとして変えていきたい。そう考え、「1人でも多くの女性が、自分の意思で人生のタイミングを選べる社会をつくりたい」という想いから、起業を決意しました。櫻井さんもユニークなご経歴ですよね?
櫻井: 最初は映像作家になりたくて美術大学で制作活動をしていましたが、ミス・インターナショナルに挑戦することになり、日本人とはまるっきり違う世界の美の基準を目の当たりにすることに。その活動を通して健康美の大切さに気づき、詳しく調べていく中で出会ったのが骨盤調整でした。骨盤調整の資格を取得し、指導をしていましたが、世の中には真偽不明なさまざまな情報が溢れていることに不安を感じ、医学の世界に進もうと決心。美の実践と医学の知見の2つが組み合わさることで、本当にいいものが伝えられると思ったんです。
坂梨: 私が骨盤に興味を持ったのは産後ですね。「ゆるむ」ということがどのようなことか、初めて実感しました。妊娠の時よりも、産んだ後の方が感覚的に大変で、歩くのも大変という状況に。ガードルを履いたり、ストレッチをしたり、プロの手に頼ったりしましたが、骨盤調整の大切さがよくわかりました。
櫻井: そうですよね。私も2025年に初出産をして、改めて骨盤の大切さを再認識しました。まず産む前から骨盤を起こしておくことが大事。そのおかげで私の場合は腰痛がゼロでした。また骨盤が前傾するとお腹の皮膚が伸ばされて妊娠線が出やすくなってしまいます。ケアをいろいろ指導してきましたが、実際に自分でもやってみて良かったと実感しています。
坂梨: 妊娠線の予防クリームはプレゼントでいただいていたりしたので塗っていましたが、姿勢までは意識できていませんでしたね。妊娠時は転倒が怖いので、出産の時でもヒールを避け、バレエシューズやスニーカーが活躍してくれました。
櫻井: 子供が生まれるとスニーカーをすごく履くようになりますよね。抱っこして転んだりしたら大変ですし。モデルの仕事などではヒールを履きますし、20代の頃は10センチを超えるようなものも選んでいました。
坂梨: ヒールが高いものだとやはり骨盤はズレやすいんですか?
櫻井: 高いヒールを履くとバランスを取ろうとして骨盤が前傾しやすくなります。骨盤をしっかり起こした状態でヒールウォーキングを意識することが大切です。骨盤が前傾していると、腰にダメージが蓄積しやすくなり、姿勢がもぐれたとした歩き方になってしまいます。骨盤をしっかり起こしていると、無駄な動きがなく、洗練した綺麗な動きがスマートにできます。また出産後も体重を落としてもお腹だけはポコッと残ってしまうことがあります。私の場合、骨盤を起こしていたので、体重が戻る前に先にお腹が元通りになりました。
坂梨さんの手掛けているmederiと櫻井さんのご研究を詳しく教えてください。
坂梨:
mederiは、オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」を運営しています。生理に悩む女性と産婦人科医をつなぎ、症状に応じた低用量ピルの処方が受けられるものです。そもそもは私自身が子どもを望む前、生理不順に悩んでいた経験にあります。低用量ピルを処方されていたのですが、仕事をしながら毎月産婦人科に通うことはとても大変でした。「この通院のハードルを下げることができれば、もっと多くの女性が生理の不調を我慢せずに済むのではないか」——そう感じたことが、mederi Pillを始めたきっかけです。起業当初から一貫しているのは、女性に自分の身体や健康について、もっと早い段階から知識を持ってほしいという想いです。特に今は晩婚化が進み、子供を持ちたいという思いが芽生えるのが以前より遅くなっています。けれど、そのタイミングで情報収集しても、選択肢が限られてしまうことが少なくありません。だからこそ私たちは、その手前にある「生理」に着目しました。
mederiでは定期的にピルをお届けする中で「こうした検査は早めに受けておくと安心ですよ」とか、「卵子の数は年齢とともに減っていくんですよ」といった、少しお節介なぐらいの情報発信もあわせてお伝えしています。
生理ケアを入口に、自分の身体と将来について考えるきっかけを持ってもらう。それが、女性一人ひとりが納得感を持って人生の選択を重ねていくための土台になると考えています。
櫻井: すごく大事なことですよね。私自身も35歳の頃から出産に関してソワソワし始め、情報を集めるようになりました。結果41歳の時に出産しましたが、正しい情報を早く得て動くことは大事なことだと思います。今、大学で生理学を教えていますが、体の仕組みを教えるだけじゃなく、ホルモンや生理のことなど、女性の将来に繋がるようなことを伝えるようにしています。
坂梨: 女性のライフステージごとに不調の内容も変わってくるという実感があります。私には、この先は更年期も待ち構えていますし。そうした状況で選択肢を知らないことが非常に怖いなと思っていて、それを知れる環境を作りたいと考えています。
櫻井:
年齢重ね更年期に向けて、どうやって自身をコントロールしていくかというのは非常に重要です。妊娠、出産に限らず、加齢によってさまざまな炎症がどんどん出てきてしまい、老化も進みますので、それらを抑える研究をしています。その一つの結論がタキシボリンですが、さらに内側からできるケアを今は研究しています。
また、産後に関しては食事も大事です。ダイエットしなきゃと食事制限される方もいらっしゃいますが、年齢が上がってくるとダイエットが必ずしも美に繋がらないということが多くあります。私自身は意識的に産後よく食べるようにしていました。タンパク質も運動をしている人と同じ量を取るようにしていたところ、産前は爪が薄かったんですけど、産後の爪は厚くなりました。肌をはじめ様々な箇所に影響が出てきますので、変にダイエットしちゃうのは危険だと思います。
坂梨: その他、女性ホルモンを整えるために日常生活でできることってどのようなことがありますか?
櫻井:
睡眠はすごく大事だなと思います。睡眠を取らないといきなり交感神経が上がってしまい、ホルモンバランスも崩れてしまいます。産後は難しいですが、できるだけ7〜8時間は取るように心がけてもらえるといいと思います。
坂梨さんは起業をして、ピルをオンラインで提供するというサービスはどのように作り上げて行かれたんでしょうか?
坂梨:
生理は多くの女性にとって日常的な悩みである一方、社会の中では十分にケアされてこなかった領域だと感じています。
低用量ピルの服用率を見ると、欧米諸国では20%以上あるのに対し、日本では3%台にとどまっています。この大きなギャップは、単なる医療の違いではなく、結果的に女性の活躍を妨げている要因の一つではないかとすら思っています。
そこでまずは、低用量ピルに対する心理的なハードルを下げ、より身近な存在として届けられるサービスをつくりたいと考えました。その実現には医療機関や産婦人科医の協力が不可欠だったため、創業当初は毎日テレアポを行い、さまざまなクリニックや産婦人科医の方々に直接お電話をして、自分の想いを伝え続けました。そうした中で、理念に共感してくださる医療機関や医師と一つずつサービスを形にしていきました。
また、「産婦人科医のみが診療を行う」というポリシーは一切ぶらさず、ユーザーの体験動線にも初期の段階から強くこだわってきました。これは、自分自身がこれまで産婦人科医に継続的に相談してきた中で実感してきた、専門性の重要さが背景にあります。例えば「不正出血」といった症状一つをとっても、その背景にはさまざまな原因が考えられます。そのため、専門外の医師では判断が難しいケースも少なくありません。だからこそmederiでは、産婦人科医のみが診療を行うという方針を、創業当初から一切変えていません。
私自身、対面診療の価値も非常に大切だと考えています。オンライン診療はあくまで代替ではなく、必要なときに対面医療へとつながる“入口”であり、“架け橋”でありたい。そうした役割も担えるサービスとして、mederiを運営しています。
櫻井: 産婦人科医さんがしっかり診療していただけることは心強いですね。私も昔から生理不順に悩まされていて、その解決策として骨盤調整と出会いましたが、女性の身体の不調に専門家がしっかり寄り添ってくれることは本当にありがたいことですよね。
女性が活躍するために、企業が取り組むべきことはどのようなことでしょうか?
坂梨: 最近、女性の健康経営の本「女性に選ばれる会社の新・健康経営」(合同フォレスト)を出版しました。女性の健康が個人の問題としてとどまってしまっている点が日本の大きな社会課題であると感じていて、企業や社会がもっと女性の健康にフォーカスし、サポートすべきだし、女性が健やかにいきいき働くことでモチベーションが上がり、パフォーマンスも上がってさらに貢献ができるはずです。櫻井さんは健康経営の資格をお持ちですよね?
櫻井: はい。医学の道へ進む際に、健康経営に興味を持ち資格を取得しました。ただ、企業の中で健康経営を行うには、産業医の方にも理解をしていただき、一丸となって取り組んでいかないとなかなか進まないのではないかという実感もありました。
坂梨: そうですね。現状では生理休暇って実は0.9%しか取得されていないそうなんです。今では、リモートワークやフルフレックスなど多様な働き方ができるので、休むよりは自分らしく働きたいっていうニーズが高くなっていることもあるかと思います。それでもなお、上司に言いづらいとか、休みづらい環境、さらに価値観の違いなどさまざまな障壁は残っています。だからこそ生理のつらさに対して、ただ「休む」か「我慢する」かの二択ではない。ケアを通じてコンディションを整え、自分らしく働ける選択肢を増やし、休むだけがすべてではないという考え方を、社会全体で共有していきたいものです。
櫻井: やっぱり社会はより良く変わっていくべきですよね。出産だけじゃなく、女性のキャリアを続けていくのって結構難しい部分があるので、女性の声をしっかりとキャッチした会社経営を考えていただけるといいと思います。そのためにも国や自治体からのサポートも大切になるかと思います。
坂梨: 東京都は最近、女性の健康課題に向き合っている企業に対して奨励金を出す取り組みも始まりました。どんどんニーズが広がり周知されるようになると、予算も増えていくのではと期待しています。
櫻井: そうですね。私は高齢出産だったこともあり、産後ケアホテルのサービスを受けました。これがとても良かったので当たり前のように皆が受けられるようになればいいと感じています。韓国では同じようなサービスとして産後調理院があり、国から補助金が出ているため90%ぐらいの利用率だそうです。そういう環境ができてくると、出産に対する恐怖だったりとか、心配しなくてもよくなる部分だったり、負担が軽くなり産後復帰していく道のりも軽くなると思います。
お二人が今後取り組みたいことはどのようなことでしょうか?
坂梨: 私自身、今は経営者という立場で働いていますが、ここに至るまでを振り返ると、必ずしも実力だけで今の役職や責任を担ってきたわけではないと感じています。むしろ、少し背伸びをするようなポジションや、実力以上の責任を任せてもらえる環境に身を置かせてもらったことで、成長する機会を与えてもらってきました。だからこそ、女性活躍を進めていくうえでも、最初から「できる人」だけを選ぶのではなく、上を目指せる余白のある環境を、トップとして意図的に整えておきたいと考えています。 挑戦の機会があり、責任を持つ経験ができること。それが結果的に、次の女性リーダーを育てることにつながると信じています。
櫻井: 私のテーマは『正しい健康美』なんですけど、美しくなりたいという時に、本当にそれをやって健康で美しくなれるのか、ということを発信していくのが大事だと思っています。そのために情報があるかないかはすごく重要だと考えています。最近では「ドラマティックビューティー」というブランドを立ち上げ、骨盤ショーツやタキシフォリンのサプリメントなど女性のためのアイテムを展開しています。
坂梨:
女性はライフステージごとに、健康状態や不調の現れ方が大きく変わっていきます。だからこそmederiでは、その変化に寄り添い続けるサービスを提供していきたいと考えています。まずは生理ケアとしてピルからスタートしましたが、今後は妊娠や出産に関わる領域、さらには更年期に対するサポートにも取り組んでいきたいと思っています。女性が人生のどのフェーズにあっても、できるだけ健やかな状態で過ごせる社会をつくることが、私たちの目指す姿です。
また、桜井先生のように研究を重ね、確かなエビデンスを持っていらっしゃる方々の存在を、私は心からリスペクトしています。そうした専門家の方々が「本当に良い」と考えるものを私たち自身も学び、正しく理解したうえで、より多くの女性に届けていく。その橋渡し役を担える存在でありたいと思っています。
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坂梨亜里咲さんと櫻井麻美さんが仕事やプライベートでのファッションやシューズについて お話しいただいたインタビューは以下でお読みいただけます。
madras journal
https://www.madras.co.jp/contents/journal/story/detail/39