健康で美しく年齢を重ねたい──。
そんな願いが、今や医学の世界でも重要なテーマになっています。
特に健康寿命の延伸において、「内側からの美」という観点は欠かせません。
今回は、アンチエイジングの分野で活躍する抗加齢医学の第一人者・青木晃さんと、
ミス・インターナショナル日本代表から医学博士へと転身した櫻井麻美さんが、
最新の知見をもとに、インナービューティの最前線について語り合います。

Profile

  • 櫻井 麻美Mami Sakurai

    医学博士/株式会社サクラボ代表取締役
    多摩美術大学に在学中、ミス・インターナショナル日本代表に選ばれる。世界大会は4位入賞。
    その後、骨盤矯正の資格を取得し、指導者としても活躍。
    2016年4月に順天堂大学大学院医学研究科に入学。2022年3月に博士課程を修了し、医学博士となる。現在は同大医学部非常勤助教も務める。

  • 青木 晃Akira Aoki

    日本美容内科学会・ウェルエイジングクリニック
    南青山 理事長、Re:Born Clinic大阪院 院長
    防衛医大医学部卒業後、防衛医大附属病院や自衛隊中央病院で糖尿病・肥満症の臨床と研究に従事。2007年には、順天堂大学大学院加齢制御医学講座の准教授を務める。2023年に「ウェルエイジングクリニック南青山」を開設。10月に「日本美容内科学会」を設立し、理事長に就任。

自衛隊の医官から
美容内科の第一人者へ

櫻井:本日はよろしくお願いします。まず、青木先生が2023年10月に「一般社団法人 日本美容内科学会」を設立された経緯について教えてください。美容を“内科学的な側面から検証する学会”というのは、国内初の試みですよね。

青木:そうですね。私はもともと、糖尿病やメタボ、肥満症などを診る代謝・内分泌内科の医師でした。2000年まで12年間自衛隊の医官として働きました。

櫻井:自衛隊の方も、糖尿病やメタボになるんですか?

青木:実は、決して珍しくはないんですよ。日本糖尿病学会でこの話をすると、他の先生方からも驚かれます。独身の若い隊員は、寮でたくさん食べても日々の訓練で消費できるので問題ないんです。ところが結婚して“営外”──つまり官舎や自宅に住むようになると、運動量がガクッと落ちる。食生活はそのままなので、30歳を超えたあたりで体重が一気に増えて、糖尿病の一歩手前になることは普通にあります。

ただ、治療に携わる中で、だんだん違和感を覚えるようになりました。糖尿病は予防できる病気なのに、今の保険医療制度では、病気と確定しないと保険が適用されません。例えば、健康診断で「血圧が少し高めですね」と指摘されても、高血圧と診断されるまで治療を受けることはできない。糖尿病も同様に、予備軍の段階では保険診療の対象外となってしまいます。制度自体が悪いというわけではありませんが、生活習慣病が増えているのに、予防医療の体制が不十分なことに強い危機感を持っていました。

櫻井:予防医療の重要性に気づかれたわけですね。

青木:はい。でもふと周囲を見渡すと、優秀な先輩や後輩の医師がたくさんいることに気づいたんですよ。それなら「病気を治す」のは彼らに任せて、私は「病気にさせない医者になろう」と。それで思い切って2000年に保険診療のフィールドから、自由診療の世界に飛び込みました。

ちょうどその頃、私の同期で親友の石川浩一先生(現・クロスクリニック銀座院長)と食事をする機会がありました。彼は先に美容医療のクリニックを開業していて、「脂肪吸引でどれだけ痩せさせても、シミを除去しても、生活習慣が変わらなければ元の状態に戻る」と明かしてくれました。この時、美容内科を広めたいという思いがより一層強くなりましたね。

櫻井:昔は美容医療といえば手術やレーザーが中心で、「内側からきれいになる」という発発想はなかったですよね。

青木:おっしゃる通りです。徐々に「美容外科」から「美容皮膚科」へと人々の関心も移り変わったように思います。昔は「メスを使わない脂肪吸引」というキャッチコピーが流行し、今でも多くの方が施術を受けていますよね。そんな中、私は体の中の代謝や自律神経のバランスを整えることで、見た目も健康も向上すると確信していました。だからこそ、美容に内科的アプローチを取り入れた美容内科という領域を切り拓こうと思えたのです。自分で言うのも恐縮ですが、“美容内科の第一人者”であるという自負はありますよ。

櫻井:間違いないです。ちなみに青木先生は、オーソモレキュラーもされているのですか?

青木:オーソモレキュラーは、主にサプリメントを使って病気を治療する手法なので、美容内科とは少し方向性が違いますね。私が取り組んでいるのは、老化によるシミやシワ、また「痩せたい」という人に対して、内科的視点からアプローチすること。つまり、健康になることがゴールではなく、その先にある「美しく、若々しくありたい」という思いをサポートする医療なんです。

櫻井:なるほど。それが美容内科の大きな特長なんですね。

青木:はい。私が自由診療のフィールドに進んだのも、実はそこにあります。医者って、どうしても患者さんに説教くさくなってしまうんです。例えば、「食事のコントロールしましょうねと言いましたよね」とか、「歩数計の数値を見せてください」とか。でも実際には、三日坊主で終わってしまっていることも多い。それくらい生活習慣を変えるのは難しいですし、ましてや糖尿病をコントロールするなんて本当に簡単なことではありません。

櫻井:それができるなら、糖尿病の患者さんはもっと減っているはずですよね。

青木:はい。だから私は説教ではなく、患者さんともっと前向きなベクトルで、建設的な話がしたかったんです。ちょうどその頃、「抗加齢医学」や「アンチエイジング」という言葉が日本にも入ってきて、これらが“予防医学”と定義されていたことに非常に興味を持ちました。確かに「健康寿命を延ばしましょう」とか、「きれいになれます」「若々しくなれます」と伝えた方が、患者さんのモチベーションも上がりますよね。美容内科の領域なら、そういう言葉をかけてあげられると思ったんです。

櫻井:具体的に、どのような治療を行ってこられたのですか?

青木:主には、点滴療法や内服薬ですね。GLP-1のような糖尿病治療薬をダイエットに応用するケースもあります。こういった“内科医だからできるアプローチ”を続けてきました。ただ、最近はGLP-1の使われ方に少し問題を感じているんです。

櫻井:GLP-1には食欲を抑える作用がありますよね。副作用も気になります。

青木:確かにダイエット効果はあるので、美容外科や美容皮膚科の先生もよく使っています。ただ、注意すべき点もあるんです。例えば、GLP-1を使って「気持ち悪い」と感じる患者さんがいたとしますよね。でも、これは薬の副作用というよりも、食べ過ぎによって気持ち悪くなっているかもしれません。つまり、使い方と事前の指導次第では、防げる副作用があるんです。ただ、このような内科的な視点でのフォローができる医師は、まだまだ少ないのが現状です。私が外科医のように二重手術ができないのと同じで、得意・不得意もありますしね。

櫻井:だから、「痩せる薬」としての側面だけが一人歩きしてしまうんですね。

青木:そうなんです。最近では、幹細胞培養上清液やエクソソームが話題になっていますが、これらを点滴で使うことは日本では承認されていません。にもかかわらず、企業がいろんな製品を出していて、中には安全性がわからないものもある。まだ研究用の試薬レベルなのに、そのことを理解しないまま使われているケースも見受けられます。こうした背景もあって、末武信宏先生(さかえクリニック院長)や、池田欣生先生(東京皮膚科・形成外科院長)と、学会を立ち上げようという話になったんです。

痩せる=美しい
という思い込みを変えた世界大会

青木:櫻井先生は、ミス・インターナショナル日本代表という立場から、なぜ医学博士を目指そうと思われたんですか?

櫻井:医学博士になったのは、「美」を追求して人に正しく伝えたかったからです。私は2006年にミス・インターナショナルに出場しましたが、当時の日本では「痩せている=美しい」という価値観が根強くありました。だから、体重を落とすことが正義と思っていたのですが、世界大会でその考えが大きく覆されたんです。なぜなら、海外の方って本当によく食べるんですよ。

青木:確かにそうですね。それに、皆さん「上手に」食べますよね。

櫻井:そうなんです。でもステージに立つと、体にメリハリがあって、こちらが圧倒されるくらい美しいオーラを放っているんです.それで、「なぜ日本とこんなに違うんだろう?」と不思議に思い、彼女たちの生活を1カ月ほどビデオで記録させてもらったんです。すると、彼女たちは体重よりも「姿勢」をとても大切にしていることがわかりました。

青木:面白い話ですね。それでどうされたんですか?

櫻井:「姿勢が大事」まではわかったのですが、それ以上の答えには辿り着けず、不完全燃焼のまま帰国しました。そんな時に出会ったのが、骨盤調整だったんです。骨盤ストレッチを試してみたところ、「これだ!」と腑に落ちる感覚がありました。

実は私、どれだけ痩せてもお腹がぽっこり出てしまうのがコンプレックスだったんです。でも骨盤矯正を始めてから、「胸を張ろうとすることで腰が反り、骨盤が前傾していたことが原因」だとわかりました。骨盤を起こしたら悩みが一瞬で解決して、「今までのダイエットは何だったんだろう?」と。そこから骨盤ストレッチを習慣にしてさらに驚いたのが、年に2回ほどしか来なかった生理の回数が増えたんです。

青木:それはすごい。当時の体脂肪率はどれくらいでしたか?

櫻井:体脂肪率は14%ぐらいでした。一般的には10%を切ると生理が止まると言われていますよね。でも食事制限もやめていたし、婦人科に行っても改善しなかったのに、骨盤調整でいきなり回復したんですよ。

青木:それは、どなたかの先生のもと学ばれたんですか?

櫻井:はい。骨盤調整の師匠に弟子入りをさせてもらって、通い続ける中で「インナービューティ」の大切さに気づきました。そこから施術もスタジオ指導もできるようになりたいと思い、資格を取って教える側で活動することにしました。

でも、ある時壁にぶつかったんです。とあるテレビ番組を見た時に「夜10時から2時が美容のゴールデンタイム」という常識がウソだったと知って、衝撃を受けました。生徒さんに伝えてきたことが間違っていたなんて、本当にショックでしたね。それで、資格や知識がどんなにあっても、「なぜそうなるのか?」「どういう根拠なのか?」を自分の力で掘り下げられないとダメだと思い、医学の世界に入ろうと決意しました。

青木:それで順天堂大学大学院医学研究科に入られて、自律神経の第一人者でもある小林弘幸先生のもとで学ばれた?

櫻井:最初は違いました。ストレッチや呼吸法を研究している中で、自律神経の重要性に気づいてから小林教授のもとで研究を始めました。確か2018年の頃ですね。

青木:そうですか。私は2007年から4年間、順天堂大学大学院の加齢制御医学講座で准教授をしていました。当時、小林先生や末武先生もいらして、小林先生とは以前から親しく、奥様のこともよく存じ上げております。末武先生は、小林先生のもとで博士号を取得された美容外科の先生ですね。『日経ヘルス』などの雑誌でもよく拝見していました。外科医でありながら、自律神経の重要性をよく理解していらっしゃる方です。今は、末武先生に日本美容内科学会の理事を、小林先生には顧問をお引き受けいただいています。末武先生からは、「早く学会を大きくしていこうよ」といつもお尻を叩かれています(笑)。

これは講演でもよく話すことですが、自律神経があってこそ、ホルモンや代謝、内分泌がうまく働くんです。さらにそれらは、筋骨格系という“体の土台”の上に成り立っている。つまり、健康や美を支えるのは、筋肉や骨格、自律神経、そして代謝や免疫なんです。これらが整ってこそ、外側の美しさにつながるんですよ。

櫻井:とても共感します。私も、青木先生とまったく同じ思いです。

青木:ありがとうございます。

美容内科は結果よりも
過程を大事にする医療

櫻井:青木先生が取り組んでいらっしゃる美容内科は、結果より「過程」を大切にしている印象を受けます。それこそ、表には見えない部分ですよね。

青木:まさにそうですね。例えば、点滴をしてすぐにシミが消えるわけではないし、GLP-1を使えば一瞬で3kg痩せるということもありません。外科の場合は「切って終わり」ですし、美容皮膚科ならシミ治療でも1カ月ほどで効果が見えてくることが多い。でも、美容内科は結果が出るまでに数カ月から年単位のケースもあります。つまり、外科医・皮膚科医・内科医では、成果が現れるまでの時間軸がそれぞれ違うんです。特に美容内科は、長期的な視点が求められます。それこそ櫻井先生は自律神経の研究もされていたので、よくご存知だと思いますが。

櫻井:その通りだと思います。まさに過程が大事ですよね。

青木:はい。私は医者として37年、美容内科に25年携わっていますが、内科医からスタートしているので、エビデンスも大切にしたいんですね。最近は、医学部を出てすぐ美容クリニックなどに勤務する先生も増えていますが、そういう方々に内科的な視点が入り込む余地ってなかなかないと思うんです。

だからこそ、日本美容内科学会を通して真実を伝えていきたい。学会を設立してまだ2年も経っていませんが、おかげさまで会員数は300人を超えました。製薬・医療機器・サプリメント業界の企業さんも賛助会員として参加してくれていて、サプリメントや点滴、間葉系幹細胞を使った再生医療といった、内科的なアプローチへの関心も非常に高いです。

櫻井:こうした学会の存在は、本当に心強いです。私は点滴に少し抵抗があったのですが、学会お墨付きのクリニックなら安心して通えますし、一般の方にとってもクリニック選びの目安になると思います。

青木:まさに今、そうした認定制度の整備を進めているところです。医師には「専門医」、看護師、管理栄養士の方々には「指導士」の資格を取得してもらい、“日本美容内科学会認定医療施設”として、安心して通えるクリニックを増やしていきたいですね。

櫻井:本当に素晴らしいです。今後がとても楽しみです。

青木:ありがとうございます。先ほど幹細胞培養上清液やエクソソームが未承認の医薬品であるとお話しましたが、こうしたことも伝えていきたいです。もし使用する場合は、医師が責任を持って臨床的な見解を説明し、患者さんにしっかりとインフォームド・コンセントを取る。書面で内容を理解してもらい、納得してサインをいただく。そこまで徹底しなければ、本来使ってはいけないものですから。

櫻井:そういったものが、なぜあれほど出回っているのか不思議でした。エビデンスよりも流行が先行しているようで……。

青木:そうですね。あと、エクソソームは「がんを大きくするリスクがある」とも言われていて、一種のサイトカインみたいなものなんですが、基礎研究の先生たちに言わせれば、「本当にいい作用をもたらすのかわかっていない」というのが実情です。しかも、幹細胞培養上清液に含まれるエクソソームを単離する技術も、ほぼ不可能だとされている。にもかかわらず、「純度100%のエクソソーム」と謳う製品が出回っているのが気になります。私たちはそういうものに警戒していて、「点滴では使用すべきでない」と明言しています。でも芸能人やアスリートが使っていると聞くと、「大丈夫なんじゃないか」と思ってしまう方も多いんですよね。その情報がSNSなどで拡散されてしまうのも、問題の一つです。

櫻井:確かに、インフルエンサーが「いい」と言えば、みんな信じてしまいますから。GLP-1受容体作動薬の一種である「マンジャロ」も同じですよね。

青木:ええ。マンジャロという薬は糖尿病治療としては承認されていますが、肥満治療を目的とした使用は未承認です。もし美容目的で使用するなら、「副作用があっても、公的な医療救済制度の対象外になる」ということを明示しないといけません。でも、それを知らない先生方もいますし、最近はオンライン診療も増えたので、説明不足からこうしたリスクも見落とされがちだと思います。

しかも、マンジャロをはじめとするGLP-1製剤は、もともと糖尿病治療薬として開発されたもので、高齢の糖尿病患者さんの治療にも不可欠です。ところが最近、自由診療でダイエット目的に多く使用されることで、薬そのものの供給が不足し、本来必要な糖尿病患者さんに届きにくくなるという問題が生じています。

櫻井:それはとても深刻な問題ですね。

青木:この件については、日本糖尿病学会からも強い懸念が示されました。内科や糖尿病の専門知識を持たない先生方が、自由診療の中でGLP-1を使用されるケースも増えていて、私たちとしては保険医療制度への影響も含め、こうした背景やリスクを正しく共有することが大切だと考えています。GLP-1については、そういった根深い問題が実はいくつもあるんです。

まだ私たちの学会は成熟していませんし、美容内科という分野も発展途上のフェーズにいます。ただ、日本抗加齢医学会などでは、基礎研究も含めて多くの取り組みが進められていますし、私たちはその中でも“美容”にフォーカスを当てた専門的な領域を広めていきたいですね。

デンマーク双子研究が証明した
「美」と「健康寿命」の関係性

櫻井:少し話は変わりますが、「美容と健康寿命」に関する研究では、デンマークの双子研究が有名ですよね。

青木:そうですね。デンマークでは一卵性双生児を対象とした研究が数多く行われています。見た目が若い人ほど病気の罹患率が低く、寿命も長かったという結果もその一つです。また、一卵性と二卵性を比較した研究から、老化の原因は遺伝より環境要因の影響が大きく、老化の75%は環境因子、25%が遺伝によるものだとわかりました。これは抗加齢医学の基本的な考え方でもあります。

櫻井:確かに、見た目に現れるシミやたるみ、シワと、糖尿病や脳梗塞、認知症などの病気には共通の根本原因がある気がします。

青木:おっしゃる通りで、根本には「酸化」「糖化」「慢性炎症」があります。これらを抑える“抗酸化・抗糖化・抗炎症”のケアをしている人は、見た目も若々しく、血管もきれいで、内臓脂肪も少なく、健康的に長生きしているんですよね。

櫻井:私もその3つを意識して研究をしてきました。そして順天堂大学での研究中に、タキシフォリンという成分に出会ったんです。文献を読み込んでいくうちに、タキシフォリンは心臓、肝臓、腎臓、脳などさまざまな臓器を守るだけでなく、感染症予防やコロナ対策にも役立つというデータが出ていました。

青木:サイトカインなど炎症のメカニズムに働きかけるということですね。

櫻井:はい。遺伝子発現レベルで炎症を抑えることができる点に驚きました。美容だけでなく、疾患予防にもつながる成分だと感じて、研究テーマを自律神経からタキシフォリンへとシフトし、論文にもまとめました。

青木:素晴らしい論文でしたね。糖代謝に効く成分は、実は臓器保護作用も強いんですよ。特にタキシフォリンは、アルツハイマーへの効果も期待されている有望な成分ですよね。

櫻井:はい、おっしゃる通りです。

青木:やはり優れた成分は共通して抗炎症作用が認められていますよね。抗炎症は健康長寿だけでなく、美肌づくりにも直結します。だからこそ、これからの美容は「美容内科」が中心になっていくのではないでしょうか。ちなみに、「お酒を飲む人も健康にしたい」という思いから、実はソムリエの資格も取得したんですよ。日本で唯一の“現役ソムリエドクター”と名乗っています。

櫻井:それはすごい希少価値ですね。先生が勧めてくださるワインなら、罪悪感なく飲めそうです(笑)。そもそも、なぜソムリエを目指されたのですか?

青木:2007年に順天堂大学で准教授をしていた頃、先輩の白澤卓二先生から「レスベラトロールやってみない?」と声をかけられたんです。当時、レスベラトロールが長寿遺伝子を活性化する成分として注目されていたのもあって、一度ワインを本気で学んでみようと思いました。

櫻井:でもソムリエの資格って、とても難しい試験だと聞いています。

青木:そうなんです。正直、医師国家試験の時より頑張ったかもしれません(笑)。2008年にワインスクールに入り、2011年にワインエキスパートの資格を取得しました。その後、ワインスクールで講師を5年務め、ソムリエの資格を取得しました。その後、さらに難易度の高い「ワインエキスパート・エクセレンス」や日本酒の資格にも挑戦しましたね。

櫻井:お酒を楽しみながら健康に近づける提案ができるのは、患者さんにとってもありがたいですね。

青木:そうなんです。「どうせ飲むなら何がいい?」と聞かれた時に、きちんと答えてあげたいんです.最近は「アンチエイジングとワイン」に関する講演依頼も多くて、医学界だけではなく、ワイン業界でも講演しています。

櫻井:アンチエイジングワインなんてあるんですね! でも、ワインにも糖質は含まれていますよね?

青木:実は、辛口ワインなら糖はほとんどゼロ。酵母が果汁の糖をすべて食べてアルコールに変えてくれるんです。日本酒やビールは糖が残りますが、辛口ワインは糖質制限中でも安心して飲めますよ。

櫻井:それはありがたいです。ダイエット中は蒸留酒を勧められることが多いですが、辛口ワインでもいいなら選択肢が広がります。

青木:しかも最近の研究で、アルコールを摂ると糖質の吸収がゆるやかになり、血糖値の上昇が抑えられることもわかってきました。特におすすめは赤ワイン。ポリフェノールが豊富で、特に抗糖化作用が期待できるものもあるんです。

櫻井:とても勉強になりました。辛口の赤ワインですね!

学会のミッションは、美容内科の力で
健康寿命を延ばすこと

櫻井:青木先生は「部分痩せ」に関する研究もされていましたが、最後にその成果についてもお伺いさせてください。資料には、13人中10人が部分痩せに成功したと書かれていましたね。

青木:実はあの後もデータが増えて、8割以上の方が部分痩せに成功しました。日本肥満学会では長年、「部分痩せは不可能」と言われてきましたが、私自身、25年近く多くのダイエット患者さんを診てきて、BMIは正常でも、二の腕や太もも、お尻など特定の部分に脂肪がついて悩んでいる方が非常に多いことに気づいたんです。

櫻井:よくわかります。そういう悩みを抱えている女性はすごく多いですよね。

青木:そうした部位は、局所的に代謝が落ちてセルライトができやすくなっているんです。脂肪の分解・燃焼もうまくいかない。そこでエンダモロジーという機器を使って、マッサージしながら吸引することで血流やリンパの流れを促し、代謝を改善するというアプローチを試しました。当時、ちょうど精密な体組成計が出始めていて、部位ごとの脂肪量を計測できたのも大きかったですね。

櫻井:BMIだけでは見えない体の局所の悩みに対して、科学的にアプローチできるわけですね。

青木:おっしゃる通りです。肥満学会では内臓脂肪や高度肥満を扱うことが多いので、皮下脂肪についての研究結果も少ない。だから私が「エンダモロジーを用いた部分痩せの症例があります」と発表すると、皆さん驚かれるんですね。私としては、美容内科こそこうしたアプローチに適していると思っています。

櫻井:青木先生の研究で特に感銘を受けたのが、運動や食事もきちんと指導されていた点です。「寝ているだけで痩せる」という都合のいい話ではなく、やはり食事・運動・代謝の流れを整えることが大切なんですね。

青木:そうですね。局所の血流やリンパの滞りを改善するだけでなく、栄養補給や運動、自律神経のバランスも含めて、トータルで考えることが必要です。私が目指す美容内科は、美しさを通じて健康寿命を延ばす「予防医学」の実践。だから、学会のコンセプトも「美容内科は究極の予防医学」と掲げています。

櫻井:とても共感します。私も、美容を通じて人が前向きになれる瞬間に大きな意味があると思っています。

青木:例えば、肌をきれいに保ちたいなら、自律神経を整えるために睡眠が欠かせません。実際、睡眠不足が糖尿病や認知症リスクを高めることは、研究でも明らかです。でも、「睡眠をとらないと病気になりますよ」と言われても、人は動かない。むしろ「肌がきれいになりますよ」と伝えた方が、人は前向きになれますよね。

櫻井:本当にそうですね。体の内側から整うことがきっかけになって、気持ちも前向きになり、心身が健やかになっていく。こうした循環が生まれるのは、とても素敵なことだと思います。

青木:だからこそ私は、美容内科の力で健康寿命を延ばしたいと考えているんです。それが美容内科学会の究極のミッション。櫻井先生も一緒に、この想いを広げていきましょう。

櫻井:ありがとうございます。青木先生に共感できる部分がとても多いので、これからの美容内科の発展に少しでも貢献できればうれしく思います。